理学検査では異常なし。でも唾液が出なくて口内が痛い…。口渇症状。

今回は、唾液が出なさ過ぎて口内が痛くて、それが気になるあまり精神的にも不安定になってしまわれたという患者様です。

「口が渇く」という現象は老若男女誰しもあると思います。特に年配の方でそのように仰る患者様は多いです。しかし、口が痛くなるほど、そして気になりすぎて寝れなくなったり精神的に不安定になってしまわれるというのはかなり症状が深刻に感じられます。

こちらの患者様は、大きな病院や街の病院など様々なところで診てもらって検査を受けても特に異常はなくて、ただただ「老化」と言われてきたそうです。

そして、整体院や鍼灸治療院などに言ってマッサージを受けたりしても全く変化はなかったとの事です。

当院には、無血刺絡という珍しい療法を行っているので来てみたとの事でした。

さて、口が渇くという症状を口渇と言いますが、この場合考えられることとしては、「老化」「自己免疫疾患」「手術などで唾液腺や神経が損傷している」「薬の副作用」「自律神経の不具合」などが考えられます。

自己免疫疾患や術後の後遺症のようなものは病院の検査でないと分かっています。服薬は、精神的な面に作用するお薬と眠りやすくなるお薬を飲んでおられます。「精神面に作用する薬」「睡眠に作用する薬」「血圧の薬」というのは口渇症状を呈する可能性が高いそうです。僕的には他に、「アレルギーの薬」「酔い止めの薬」なんかもそうだと思います。

しかしいくら口渇症状を呈するからと言って、今日から服薬を止めてくださいとは言えません。今の状態でなんとかできる事を行っていくしかありません。

長田先生がお書きになられた「チクチク療法の臨床」にはシェグレン症候群、糖尿病による口渇症状の緩和の症例が載っていました。なのでそれを元に無血刺絡を行いました。井穴と頭と顔、あと全脊柱に刺激しました。

直後から多少さらっとした漿液性の唾液が出たような気がすると仰っていました。

初回はそれで終了しました。二回目に入らした時は、すぐ元に戻ってしまったとの事。…症状に変化が出るまで時間はかかるだろうなとは思いつつも取り合えず前回と同じ箇所に刺激をしました。

三回目に入らした時は、二回目はあまり変わらずむしろ乾きが強いように感じたとの事。

理屈では、副交感神経が優位になると漿液性の唾液が分泌されます。そして痛圧刺激を行うことで副交感神経が優位になります。特に指先や頭、顔、背中など。当たり前の事を行っても思ったような効果はでませんでした…。

そこで、東洋医学的なアプローチも加えました。「唾液」は腎と脾が関係しています。そこに補法を行い、お灸も行いました。とにかく副交感神経が優位になるように頭や体をマッサージも行いました。

4回目に入らした時は…、それでも変わらなかったとの事でした…。

そこで僕は初心に帰って、解剖学的に考える事にしました。普通に考えて唾液は主に「顎下腺」「耳下腺」「舌下腺」から出ます。そこを押しました。すると、なんか唾液が出てくる感じがするとの事。さらに、その三つの腺がある箇所はデルマトームで言うところのC2領域なので、C2に無血刺絡の刺激をしました。すると、これも唾液が出てくる感じがするとの事。C2以外にも反応があるかを調べるため、脊柱と頭に刺激をしたところ全体的にどこを刺激しても唾液が出てくる感じがすると仰っていました。頭も背骨も最初から刺激を刺激をしていましたがさほど効果はなかったのですが、4回目では違った反応になりました。これは、4回めで刺激がようやく自律神経に行き届き、神経の回路の様なものが出来上がってきたというか、呼び覚まされてきたというか覚醒してきたのかなと思いました。あとは、4回めでようやく心が通い合ってきたというか、安心して下さったというか、警戒が溶けてリラックスして頂けるようになってきて施術効果が表れるようになってきたのか定かではありません。

施術後に、とても辛い状態、潤いがない時を0とすると刺激後はいかがですか?と尋ねると60%くらい潤ってきたとの事で、とても嬉しかったです。患者様も喜んで下さいました。

5回目にいらして頂いた時は、刺激後は何日か潤っている感じがしたとの事!

ここにきてようやく何らかの変化が出てき始めた感覚がありました。5回目も同じように唾液腺と頭、脊柱に刺激を加えました。特にC2から後頭骨までのあたり。ここがなぜ大切かと言うと、唾液分泌の最高中枢は「延髄」であり、C2、C1、C0あたりが延髄の近くだからです。やはり、特にその辺りへの刺激は唾液腺のデルマトーム領域の神経の出口ということもあって唾液が他の部位よりもたくさん出ている気がすると仰っていました。

まだまだ症状がどのように変化していくのかは分かりかねますし、油断できませんが、いずれにしても効果の出たポイントを突き詰めて、少しでも患者様の日常生活が楽になるように、素晴らしい物になるように持って行くのが僕の役目です。よりより安全な施術ポイントと、理論を見つけられるように日々勉強が大事であると思っています。

神楽坂 東五軒町鍼灸整骨院より。