腱板損傷の痛みと井穴刺絡。

肩周辺の疾患の中で腱板損傷がある。回旋筋腱板といわれる、肩関節を守っている筋腱の損傷の事だ。

これは、コンタクトスポーツなどによる直達外力や繰り返しの介達外力により筋腱にダメージが加わって発生するケースもあるが、年齢と共に自然に痛んでしまうケースも多い。50代では10人に1人、80代では3人に1人と言われる。

50代で10人に1人ということなので、50肩と間違われやすかったりもする。ここで問題なのが、50肩と腱板損傷では大きく病態が違い、リハビリ内容も異なるということだ。すなわち、腱板損傷の方に50肩のリハビリをするとさらに悪化させてしまう可能性があるとうことだ。

50肩の場合基本的に関節包の癒着をはがすという事が目的とされる。なので、かなり痛みが強い急性期を除いてとにかく拘縮予防と関節包の癒着をはがすという目的で多少痛くても動かさなくてはいけない。

では腱板損傷はどうか。傷ついた腱は基本的に自然治癒しない。腱板損傷は部分断裂か完全断裂のどちらかであり、日々の生活で大きな不具合がある場合やスポーツ復帰を考えるアスリートの方ならば手術が第一選択肢となる。痛みは多少あるが、そこまで生活の質が下がるわけでもなく、スポーツとも無縁だという方ならば保存療法、すなわちリハビリが治療の主となる。

痛みがある場合は消炎鎮痛を行う。肩主変のマッサージや経絡筋膜のラインを遠隔で緩めるのもいいだろう。あとは関節部分を徹底的に強化していくのだ。大きな動きをして大きな筋肉を鍛えるのではない。小さな腱板の筋肉をピンポイントで鍛える小さな動きをたくさん行っていくのだ。これをすることで肩関節を安定させるインナーマッスルを鍛える事が出来る。腱板損傷で一番痛みやすいのは棘上筋だ。痛んでいる筋腱を鍛える時は決して痛みを感じながらトレーニングをしてはいけない。痛む一歩手前でとめる。なんなら負荷をかけずに他動運動だけでもよい。

それらを3~6カ月程続けることで痛みが楽になるケースが多い。約7割くらいは楽になる。

肩周辺の痛みは他に、石灰沈着による激烈な痛みや、亜脱臼、頚椎症による肩の痛み、胆石による放散痛、循環器疾患の副症状など様々ある。気になる方はまずは最寄りの整形外科を受診したほうがよい。

が、それでもよくならず、手術をするまででもないような状態であれば、一度相談して欲しい。当院には、腱板損傷による肩の痛みを井穴刺絡療法で気にならなくなるレベルまで緩和させた症例がある。上記のような西洋医学的なアプローチであまり効果が見込めない時は東洋医学のメソッドも時として重要となる。井穴刺絡とは、指先に鍼を刺して瘀血と言われる滞ってほぼ循環していない血液を外に排出させて、循環を良くして経絡、血管の走行に栄養を送り届け離れた患部にアプローチしていくという治療法だ。鍼を打って奥の筋肉を緩めるという、ベーシックな鍼治療とは一線を画す、マニアックな鍼法だ。腱板損傷のほかに、経絡、血管、筋膜、内臓などの動きや血の巡りが悪いという状態が基盤としてあるならば、この井穴刺絡が功を成す可能性は大いに見込めると思う。