当院では刺絡療法、無血刺絡療法を専門で行っています。

当院では刺絡、無血刺絡を専門で行っています。※一番下に瘀血の写真があります。血が苦手な方はお気を付けください。

「刺絡」とは、「井穴」「背部兪穴」と言われるWHOで定められた然るべき経穴(ツボ)に鍼を刺してそれにより出た血をある程度出なくなるまで出すというものです。

鍼を刺して出た「血」の事を、溜った余分な血と言う意味の「瘀血」と言います。これを出して血や気の流れを良くして自律神経を調整したり、五臓六腑に関係する何らかの症状を緩和の方向へ持っていくことが狙いです。その他、慢性的な腰痛や肩こりなどに対して、筋肉を和らげる効果も期待できます。

マッサージやストレッチ、ヨガなど血に巡りを良くする方法は数あれど、溜った瘀血を出す方法は「刺絡」だけです。

瘀血とはなにか

瘀血とは、微小循環障害により起きます。人体には全長約10万キロメートルといわれる血管が全身に分布していて、この長さは地球を2周半する距離に匹敵します。そのうちの約9割は毛細血管(1000分の5㎜)という小さな血管です。「心臓から送り出された血液は手足や各臓器の末梢では毛細血管を流れる「小さい流れ」となる。この「微小循環」の流れは全血管の90%を占めており、細胞組織に絶え間なく体液の流れを分配し、細胞組織の機能を円滑にし、代謝産物を浄化するという運搬役の他に、血液の貯蔵庫としても機能している。「瘀血」は現代医学で言う「微小循環障害」とほぼ同一であると思われる」と、医師の西田晧一先生は著書の「瘀血を治す」で書かれています。

瘀血は心臓から拍出されて全身を巡って心臓に帰る静脈血、それも特に背中の小さな細静脈や毛細血管に溜りやすいので、刺絡で狙う経穴周辺の血管は細静脈や小静脈となるわけです。

静脈血と瘀血の違い

通常の静脈血と瘀血(微小循環障害を起こした皮下の静脈血)とで何が違うのか、西田先生は次のように書かれています。

「瀉血血清」は「静脈血清」に比べて総タンパク質が明らかに高く、さらに総脂質も非常に高く、コレステロールやフルクトサミンも高い。その上、アルファ2炎症惹起物質も高く、またCRPの値も高い。だから粘っこくて炎症を起こすような物質が多く含まれている。※西田晧一先生著、「瘀血を治す」より抜粋。

このような瘀血を刺絡で体外に出すことで組織内圧が減少し、炎症惹起物質などが排除されることでお体をよりよい状態へ近づける事ができるのではないかと私は考えています。

爪の付け根にある「井穴」から瘀血を出す「井穴刺絡療法」

指先には、五臓六腑に通じていると考えられている「井穴」という急所があります。

手の人差し指は「肺」、親指は「大腸」、薬指が架空の臓器である「三焦」、小指の内側が「心」外側が「小腸」、中指が架空の臓器である「心包」。

足の親指内側は「脾」外側は「肝」、人差し指は「胃」、薬指は「胆」、小指は「膀胱」というように割り振られています。

これらの井穴に専用の鍼を1、2ミリ刺して血を出します。痛みはほぼありません。たった1、2ミリしか鍼を刺していないのに、割と血は出ます。個人差もありますが、約20滴から30滴程出していきます。

繰り返し書きますが痛みはほぼありませんのでご安心下さい。

この井穴刺絡療法ですが、主にどのような症状に効果があるのか実際に当院での施術実績をふまえて以下にお伝えしていきます。

井穴刺絡による改善症例1 声が出ない。

1 30代女性
風邪を引いて喉が腫れて声が出なくなった。ひそひそ声のような状態で全く音を出すことができない。呼吸器系の症状の場合は手の太陰肺経の井穴である「小商」と、その表裏である手の陽明大腸経の井穴「商陽」を使う。左右でこの二つのツボに刺絡を行う。計4か所から20滴から30滴程瘀血を出す。その直後からひそひそ声の中にも一瞬だけ音がでるようになってきた。そこから30分から1時間後、かなり声が出るようになってきて、ガラガラ声くらいには回復してきた。次の日には60%くらいまで声が通常に出るようになった。

2 40代女性
声をよく使うお仕事をされている患者様。今度の会議ではとても大きなプレゼンをされるという事で緊張もあり急に声が出なくなった。風邪症状はなくて痰なども出ていない。ほとんど声が出なくてかすれ声がたまに出るような状態。こちらも同じように「小商」「商陽」からの井穴刺絡。あとは、頭皮や背中への刺激も加えた。施術後一時間経過くらいから声が出るようになってきた。恐らくこちらの症状に関しては自律神経的な要素も強かったと思う。確かに、声をよく使う仕事という事で声帯に多少の腫れがある可能性もあるが、緊張やストレスにより気道が狭くなったり何らかの身体表現性の症状が出た可能性もあると思う。その後、お入浴して十分に休息をとり、次の日にはほぼ困らないくらいまでに声が出ていた。

出血を伴う、切れ痔。

40代男性
お酒や油っぽものなどを食べたり、あと冬になると痔の症状が強く出るという症例。排便時に血がでるということから切れ痔であると以前肛門科で診断を受けている。痔の症状は大腸経の「商陽」と肺経の「小商」その他、背部兪穴の「大腸兪」、百会にも刺激を加えた。これにより出血の頻度が減った。少し無理をした時も出血しなかったとの報告を受けた。

痔の疾患に刺絡が効く理由の一つとして、自律神経に作用しているというものがあります。
「井穴」や「背部兪穴」に痛圧刺激を加える事で副交感神経が優位になるわけですが、それにより活性酸素をあまり出さないようにしているのです。どうゆう事かと言うと、ストレスが溜まったり緊張状態の神経が優位になると白血球の中のリンパ球の値が減り顆粒球という値が増えます。この顆粒球は寿命を迎えると活性酸素という毒になります。活性酸素は胃腸粘膜などを攻撃する性質があるため、痔の症状がある場合は悪化しやすいのです。なので刺絡や鍼灸、無血刺絡などの刺激で副交感神経を優位にしてなるべく活性酸素を出さないようにというのが一つの施術方針なのです。

なので、自律神経に作用しやすいポイントというのが「井穴」、「背部兪穴」、「頭部」などになるのでそこの急所に刺激を加えました。

しかし、「痔」の疾患は決して侮ってはいけません。出血量があまりにも多いとか、頻度が多い場合は痔ではない別の疾患の可能性もあります。内痔核の脱出を伴う場合、自然に戻らないようであれば手術適応グレードとの判断に至る場合もあるので、まずは肛門科の受診をお勧めします。

「背部兪穴」からの刺絡とは?

背中には、「兪穴」と言って五臓六腑に通じていると考えられている急所があります。

実際には、肺の裏側辺りに「肺兪」とか、肝臓のあたりの高さに「肝兪」という感じで臓器の付近の背骨の横にあります。ここから刺絡をする場合は、井穴刺絡と同じように自律神経の調整であったり、五臓六腑と関連のある症状の緩和が目的ではありますが、割と強めの症状がある場合に使用したりします。

具体的に書きますと明らかなつっぱり感、強い首肩背中腰のこり症状など、あとは「実証」です。「実証」とは東洋医学的な体の状態を示す考え方で、何かが有り余っていることにより起こる体の不具合の事をいいます。例えば、とても体が熱い、イライラする、何らかの強い症状があるというような状態です。

以下に「背部兪穴」からの刺絡による改善した症例を書いていきます。

原因不明の全身の痒み。

40代男性
数年前からある条件になると全身が痛いくらい痒くなる。皮膚科や内科など何件か病院にも行ったが原因が分からず、症状も変わらない状態。特定の条件と言うのは、イライラしたり、汗をかいたり、冬、夏になると強く症状が出る。海外旅行が趣味で、旅行中はなぜか症状がでない。その他、デスクワークが多くて肩、背中、腰が慢性的に重だるい。

こちらの症状に関しては、背中の筋肉の血流促進、筋緊張緩和の他に、自律神経調整といった観点からも刺絡を行いました。
指先や背中、頭、顔は特に自律神経に作用しやすい部位と考えられています。イライラすると症状がでる、逆に旅行中、すなわち好きな事をしてストレスがない時は症状がないというところからまずは自律神経に働きかけるのが良いのではないかとの考えから、刺絡を行いました。自律神経の調整の理論については「無血刺絡」の項で詳しく書いていきます。

刺絡の場所は、東洋医学的に「怒り」の感情と関係が深い「肝」の急所である「肝兪」、「大敦」、「胆兪」、「足キョウ陰」、腰背中の筋緊張緩和の為に「大腸兪」、「肩外兪」です。

濃い色の血がかなり出ました。施術直後から痒みが和らぎ背中が軽くなったとの事。施術後から1、2週間経過しても症状はさほど出なかったとおっしゃって頂きました。月に一度のメンテナンスで大分背中の重だるさ、痒みが抑えられているとの事で喜んで頂きました。

肩、背中、腰の慢性的な痛み、重だるさ、痺れの症状。

40代女性
夜勤もあるお仕事をされていて、家事、育児、お仕事ととても忙しく満身創痍で、首肩、背中、腰が常に辛くて下肢に痺れが少しあり、首と腰に運動時痛がある状態。施術方針としては、筋肉を緩めると共に刺絡により全身の血流促進、自律神経調整、運動時痛に関与している筋肉の緊張緩和。まずは全身マッサージでほぐした後に、首と腰の回旋時痛に関与していた頚、肩、腰、臀部に鍼治療を行い、「大腸兪」、「肩外兪」、「肺兪」から刺絡を行う。最後に頭に刺激を加えて終了。臀部と腰のはり治療で下肢の痺れと運動時痛がかなり楽になり、全体的に体が軽くなったとの事。その後、運動時痛は気にならなくなったけど体の重だるさが疲労の蓄積でどうしても出てくるとの事で、月に一度メンテナンスとして当院にて施術を受けている。

こちらの患者様の症例ではマッサージや鍼治療も加えて行いました。
全てにおいて刺絡が万能ではないのです。運動時痛は、「動かすと痛い」症状と関連した原因部位を正確に刺激して緩めないと効果はありませんし、臀部の筋肉は大きくて層も厚いので鍼や別の方法でないとダイレクトに刺激を加えて緩ませることが出来ません、「刺絡」以外にも、適切な箇所に適切な刺激を加えるという事が重要です。

血を出さずに「刺絡」と同等の効果を出す、「無血刺絡療法」とは何か?

関係書物も多数出版されている脳神経外科医の長田裕先生が考案された治療法です。

「無血刺絡療法」とは別名「チクチク療法」とも呼ばれ、脳神経外科医の長田裕先生が作り上げた理論と技術の事です。

長田先生自らお書きになられた無血刺絡に関する手技書や、一般向けの本なども出版されています。
また、「夢21」や「わかさ」などの健康雑誌にも「無血刺絡」は取り上げられています。

無血刺絡療法とは、その名の通り血を出さないで刺絡と同等の効果を出すという療法です。
そもそも刺絡療法とは簡単に言うと、自律神経調整を促して様々な体の不調を和らげるというものです。

この無血刺絡の鍵をにぎるのは、チクっとする「痛圧」刺激です。「チクっ」という刺激や、「熱い!」という痛圧刺激が皮膚表面に加わることで基本的には副交感神経(リラックスの神経)が優位になります。それにより、内臓運動活性化、血管拡張、血圧脈拍の低下などの効果があります。
逆に、副交感神経が優位になりすぎて症状が出ている場合は交感神経が活性化します。要は、自律神経を中庸に戻すという働きが行われます。その反射、反応を可能にするのが井穴や背部兪穴、顔、頭などの行う無血刺絡療法です。

無血刺絡により自律神経に影響を与えている根拠。

無血刺絡には、このような特殊な鍼を使っていきます。
これは決して皮膚の下に刺し入れるようなことはしません。あくまで、然るべき部位(皮膚)に対して痛圧刺激を加えるだけです。

さて、なぜこの無血刺絡で自律神経を調整できるのかという根拠について書いていきます。
交感神経が優位になっていると、白血球中の顆粒球の値が高まります。しかし、無血刺絡後に白血球分画検査を行って調べてみると術前に比べて、顆粒球の値が下がってリンパ球の値が増えているという事が確認できているそうです。

これすなわち、施術により副交感神経が優位になった、または交感神経の緊張を緩めて平らにしたという事です。

また、血圧脈拍に関しても術前術後で比べれば高すぎるものは低く、低すぎるものは適度に上げる事が出来たという症例もあります。

自律神経は間脳の視床下部が最高中枢です。痛圧刺激を加える事でその刺激が神経のトンネルを通り脳に入ることで、視床下部だけではなく、大脳、中脳にも作用してホルモン分泌を促す効果もあります。それは、パーキンソン病という、中脳黒質から出るドーパミンというホルモンが少なくて振戦の症状がでるという病気ですが、無血刺絡により振るえる頻度が減った、治まってきたという症例も多数あります。それすなわち、無血刺絡によりドーパミン分泌を促進させたとも考えられます。※パーキンソン病に関しての無血刺絡は刺激量に注意が必要です。

あとは、僕自身の症例ですがお酒を飲みすぎて頭が痛いというアルコールによる血管拡張型頭痛に関しては今まで3回程ありましたが、今のところ三回とも症状が大幅に改善しています。
これは、お酒を飲むと血中アルコール濃度が高くなるので、それを薄めるため血管内に水分を取り込もうとする働きにより血管が拡張して、血管拡張型頭痛を引き起こすのです。
この場合頭に刺激を加えますが、施術直後からズキンズキンという強い痛みが和らいできて、5分も施術を続けているとほぼ痛みがなくなり、すんなり寝る事が出来ました。
これは無血刺絡の刺激により、広がった血管を「平」に戻す、中庸に戻すという働きが起こったと考えられます。さらに、副交感神経が優位になると内臓運動が活性化しますので、次の日の胃のムカつきや消化不良の様な感覚、二日酔いは一切ありませんでした。これはあくまで個人の感想ではありますが、3回とも同じように効果は出ていますので施術効果としては信頼できると思っています。

専門技術と知識を身に付け、認可された臨床家のみが施術出来る無血刺絡療法。

理論と、技術を時間をかけて創始者である顧問の長田先生と、代表である芝山先生の元学んでいき、最後に試験を受けて合格した臨床家のみが無血刺絡療法を行うことができます。

基礎、理論、上肢、下肢、難治性疾患に対するアプローチ法、実技を時間をかけて学び、定期的に定例会もあります。

無血刺絡の良い所は、医師が顧問であるという事です。
実際に長田先生が治療されて効果が出たという臨床症例に基づいて、我々が患者様に施術させて頂きます。さらに、鍼などで皮膚を切るわけではないのでリスクが全くないというところも利点です。

我々臨床家は、患者様の症状を和らげるために頼れる効果的な技術と理論を求めると同時に、患者様に危害を加える事がない安心安全の理論と技術も求めています。無血刺絡は、医師公認で、医師が施術し効果が出た施術マニュアルがあるという信頼と、皮膚表面のみの刺激であり体を傷めないノーリスクの施術という安心安全の両側面を兼ね備えています。

当院で効果が出た症例の一部。

ここにいくつか改善症例の一部を上げていきます。

ぎっくり腰、寝違え、変形性膝関節症による膝の痛み、テニス肘、ゴルフ肘、50肩、アトピーによるひどい痒み、三叉神経痛による顔の痛み、片頭痛、筋緊張型頭痛、後頭神経痛、アルコールによる血管拡張型頭痛、腱鞘炎、ばね指、高血圧、原因不明の背中の痛み、夜間頻尿、不眠、急性の筋挫傷、脊柱管狭窄症による痛み痺れ、レイノー病による指の痛み、頸椎ヘルニアによる首肩の痛み、花粉症によるアレルギー反応などです。

効果が出るのは割と短時間で、場合によっては一瞬です。症状が緩和した時点で、余計な刺激は加えたくないので5分で施術が終了する場合もあります。

症例に関しては他にも創始者である長田先生がお書きになった本に、実際に先生のクリニックで治療した症例が載っているのですが、それを見るともっとたくさんあります。

脳血管障害後の多彩な後遺症、糖尿病性神経障害による痺れ、ヘルペス後の神経痛、パニック障害、脳脊髄液減少症、認知症、パーキンソン病などの症状が緩和したという症例が記載されています。もっともっとありますがこれくらいにしておきます。
※「チクチク療法の臨床」の目次欄より抜粋。

長田先生がお書きになった無血刺絡療法に関する書籍。

無血刺絡療法は多くの健康雑誌に取り上げられています。

料金と施術時間と内容、注意点について。

初回のみ別途初診料1500円、最終来院日から半年経過で再診料1500円別途申し受けます。

無血刺絡は半身6600円、全身ならば13200円です。

刺絡は132000円~です。

刺絡の施術は、マッサージ、無血刺絡、温め、吸い玉、刺絡の流れになります。マッサージで筋肉をほぐしてリラックスして頂き、無血刺絡で自律神経にアプローチして、温めで血行を良くし、吸い玉で筋膜やファシアの滑走をよくすると同時に瘀血を吸い上げ、最後に刺絡で瘀血を出していきます。

この他に、お美顔の鍼や足裏マッサージ、動かすと痛む症状の緩和の手技や調整を追加したい場合は、1時間半~2時間かけて、料金は16500円~22000円の間で対応致します。※後の患者様のご予約状態にもよります。

※施術前当日お酒を飲んでいる方、普段血液をサラサラにするお薬を飲んでいる方、血圧脈拍が極端に低いなどバイタルが安定していない方、何らかの感染症をお持ちの方、妊娠中の方、いないとは思いますが問診表などに体の状態に関して嘘の申告をされる方は刺絡をお受けになれません。また、患者様の抱えるお悩みが、鍼灸師の対応できる範囲ではないと私が判断した場合も施術出来かねます。

※閲覧注意。刺絡により出た瘀血の一部。