若年者の拒食症。「痩身」は必ずしも「正しく」はない。

拒食症

拒食症とは痩せたい願望や太ることへの恐怖のため、極端な食事制限、過食嘔吐、不適切な下剤の使用で極端な低体重になることをいいます。

思春期の子供さんはいや若い男女など気をつけなければいけません。

20歳未満の拒食症の方の初診外来患者さんは2019年から2022年までの間で1.4倍も増加しています。※主典 国立成育医療研究センターの調査より

平田法による標準体重の目安

身長150センチに対して、軽症は42.5キロ

中等症は37.5キロ、重症は32.5キロ、超重症は27.5キロです。

身長60センチの場合、軽症は45.9キロ、中等症は40.5キロ、重症は35.1キロ、超重症は29.7キロです。

身体に対して体重が低かったり低すぎる場合は注意が必要です。

子供の体重や食事などに家族が気を配り拒食症と低体重をなるべく早期に発見し、治療することが大切です。

痩せている=健康ではない

年頃の女の子は特に注意が必要で、モデル志望、チアリーディング部に所属している、クラシックバレエを行っているなどがきっかけで過剰に体重を気にしてしまうとよくありません。

または、体重減少が快感や達成感にリンクしてしまって癖になってしまっている人もいます。

拒食症の診断としては、低体重や急激な体重減少のほかに、痩せ願望、肥満への恐怖、食行動へのこだわりなどが確認されるかどうかが重要なポイントとなります。

極端な低体重になると低栄養になり体の様々な部分に支障が出ます。

具体的な拒食症の症状としては、脳萎縮、虫歯、唾液腺の腫れ、腎機能障害、骨粗しょう症、吐きダコ、無月経、浮腫、脱毛、濃い産毛、肌の乾燥、便秘、手足の黄色みなどです。

上記の症状のほとんどはきちんと食事を行うことで栄養が供給されて改善します。

しかし、骨粗しょう症、成長期の低身長、虫歯、長引く無月経は大人になっても影響が残る場合があります。

思春期に低体重が起こると身長の伸びが止まってしまう場合もあります。

拒食症から体重になってしまう原因の1つに、良かれと思って行っている生活習慣に落とし穴がある場合があります。

例えば、ダイエット食品を大量に食べている、栄養のバランスが取れた料理をしっかり作るけど自分は食べず人にばかり食べさせる、インターネット等の知識を鵜呑みにして砂糖、小麦粉などを厳しく制限する、食事を小さく切り刻み過ぎる、運動しすぎるなど。

拒食症で病院を受診する場合、中学生以下なら小児科、児童思春期精神科へ。高校生以上は精神科、心療内科が良いでしょう。

必要ならばインターネットで、「摂食障害全国支援センター相談ホットライン」と調べていただければ最寄りのクリニックが見つかると思いますので見てみてください。

子供の拒食症3つの原因

子供の拒食症の原因は、①背景要因、②発症要因、③ 維持要因の3つで説明されます。間違ってもネグレクト以外で「家族が悪い」と強く思ったり決めつけてはいけません。

背景要因とは、痩せている事が社会的成功、美しさの象徴とみなす文化的背景に即して自身を最適化しようとすることです。

対人関係など社会的ストレスが背景にある場合もあります。

発症要因とは、ダイエットに成功した際に周りから好意的な言葉をかけられたなど、周囲に認められた実感が自信になったという経験がモチベーションとなり過度なダイエットにエスカレートしてしまうような状態の事です。

維持要因とは、認知の歪み、食行動異常が関与しています。例えば拒食症の人は自尊心が低く、几帳面で脅迫的な特徴があります。痩せていることこそ価値がある、太るのは許せないという勝手な思い込み、100グラム体重が増えただけでもその先太り続けると思い込んでいる、等の認知の歪みがさらなる食行動異常につながり今よりもひどい飢餓や低体重に陥っていく悪循環です。

拒食症の治療は、シンプルですが「しっかり食べて体重を戻す」を目指していくことです。体重を徐々に戻しながら歪んだボディイメージに気づいてもらい、少しずつ軌道修正をかけ、食生活や栄養など包括的に健康を学んでいく事でリカバリーしていくのです。

体重を戻すための食事の仕方として大切なのは、「3食を規則的に取る事」と「食事の間隔を4時間以上開けない事」です。

治療で大切な事

治療で欠かせないのが家族など周囲の理解とサポートです。拒食症の方は「食べる事」が苦しみと感じています。そのため体重が今より増える事は間違っていない、健全であり正しい事であると道を指し示し、時に励まし、元気付け、「可愛い」「綺麗」などの肯定的な言葉掛けが支えとなります。

これはある意味、精神との戦いでもあるため治療には時間がかかります。それでも、気質的な異常や病気ではないので必ず治ります。もし拒食症で苦しんでいて今がとても辛い方がいたら、できる範囲で少しずつ進んでいきましょう。