起立性調節障害は、脳や全身血流を送る機能が低下して起こります。主な症状は、立ちくらみ、めまい、頭痛、動悸、失神、起床困難などです。二次症状としてメンタルの不調を来たすこともあります。

症状は午前中に強くあって午後から改善していく傾向にあり、主に小学生から高校生にかけての若い子に多く発症します。朝が起きられなくなるので昼夜逆転してしまい生活サイクルが著しく崩れてしまう可能性があるので注意が必要です。

実際に、不登校の子供さんのうち約3から4割は起立性調節障害の症状があることもわかっています。

「朝起きれない」のは決して怠けているのではないのです。起立性調節障害に関しては家族、周囲の人間の理解と協力、環境の整備がとてもとても大切です。

原因と自律神経

起立性調節障害の原因は、自律神経がうまく働いていないことにあります。体の成長に自律神経の成長が追いつかず、様々な不調が出ているのです。

自律神経は緊張状態である交感神経とリラックスの状態の副交感神経に関与し、中でも血管収縮拡張を司っています。

寝ている状態から立ち上がると、頭の位置が高くなります。それすなわち、血液を下から上に上げればなりません。そのため自律神経は、心臓に働きかけて血圧を高めて勢いをつけて血液を上に上げようとします。さらに自律神経は心臓から駆出された血液が逆流しないように血管を収縮させるのです。この働きにより我々は普段、寝てる状態から起きて立ち上がることができるのです。

ところが、自律神経がうまく働いていないと上記のような循環器系の働きが起きず、立ち上がったは良いものの貧血を起こしてしまい、座り込んでしまい動けなくなってしまうのです。ひどい場合、倒れてしまう事もあります。

頭痛と自律神経

頭痛は主に、筋緊張型頭痛と血管拡張型頭痛大別されますが、この2つは血管の収縮拡張が大きく関わっています。筋緊張頭痛は血管が収縮することにより血の巡りが悪くなって痛みの物質が滞ることで頭痛につながります。

血管拡張型頭痛は、無駄に血管が広がることで三叉神経に干渉してしまい、拍動に伴う不快な痛みを引き起こすのです。

そのため、自律神経が乱れると頭痛が起きやすくなります。主に、血管が開きっぱなしの状態の血管拡張型頭痛が多くみられます。

そして自律神経は胃腸運動もつかさどっています。食欲がいまいち湧かなかったり、不規則な時間に腸が動き出して腹痛を起こしたり、腸が動きすぎることで下痢を引き起こす場合もあります。

しかし、冒頭で述べたように起立性調節障害は、体の成長に自律神経の成長がついていってないことで発症します。そのため、時が経ってある程度自律神経が成長すれば自然と症状はおさまっていくはずです。

成長と共に改善がみられる

専門医の話によると、適切に治療を行えば（重症でなければ)発症後約1年で50%、2から3年後には75%が改善されるとのことです。※ NHK 今日の健康　2025年0415日放送回　起立性調節障害　大阪医科薬科大学病院小児科　吉田誠司先生　より

起立性調節障害は基本的に血圧が低くなります。そのため、水分と塩分をしっかり摂るようにすることが肝要です。

水分は1日1.5リットルから2リットル、塩分は普段の食事+3グラムが目安となります。ときにはこれらを超えてしまう場合もあるかもしれません。摂りすぎなのではないかと心配なる場合はかかりつけの医師に相談してください。

そして、ご家族の方はついつい良かれと思って指導やアドバイスを時に強く言ってしまうこともあるかもしれませんが、ご本人の主体性を尊重する事が何よりも大切です。好きなことにチャレンジする、熱中することでほどよく自律神経が調整されて、ワクワク感、ドキドキ感が交感神経優位のトリガーになる可能性があります。

そして、寝る前にタブレットなどを見てはいけない、15時以降の昼寝は避けること、日中は太陽の光浴びてなるべく体動かすこと、朝起きる時間を自分で決めること、起床時間には好きな音楽をかけて気分を上げるなども大切です。

起立性調節障害のチェックリスト

・立ちくらみやめまい

・朝なかなか起きられない

・立った時に気分不良、失神

・動悸や息切れ

・入浴時や嫌なことで気分不良

・食欲不振

・頭痛

・顔色が青白い

・腹痛

・乗り物酔い

・倦怠感

この中で3つ以上、または強い症状が2つ以上あてはまる場合は起立性調節障害の可能性があります。思い当たる方は小児科を受診してください。

治療は基本的に生活習慣の改善などがメインとなりますが、広い場合は薬物療法もございます。ミドドリン塩酸塩、漢方薬などを用いて末梢血管収縮を促すのです。