人間は飲食物を摂取すると消化管にて「血」と「津液(水)」が作られます。東洋医学では血と津液をとを含めて陰液と呼んでいます。これは現代医学では体液と考えられていて、臓腑を滋養して体内の機能を維持する働きがあります。
東洋医学的に、血は血だけの力で全身を巡ることはできず、気の力がなくては全身を巡る事ができないとされています。そして、血が順調に全身を巡るには、肺気の宣降作用、肝気の疎調作用、脾気の統摂作用、腎気の温煦作用などがあって初めて循環することができると考えられています。心気の推導作用などあらゆる臓器の持つ特性や気の力が必要であると昔の中国の臨床家は考えました。
「気」の解釈は様々できますが、血が全身を巡るために大切なのは血圧と心臓のポンプ機能が必要です。よって、ここでは気=心臓含む循環機能とも捉える事ができます。それだけ血液や津液など、体内のあらゆる液体の循環が大切だという事です。
血は脈中にあって絶え間なく循環し、五臓六腑栄養しています。気が滞ると血と津液が順調に流れなくなり瘀血や痰飲(余分な水分が蓄積したもの)が発生し、臓腑の機能障害や関節痛、浮腫や肩こりなどを引き起こすことになります。体内のあらゆる水分は多すぎても少なすぎても病理的な状態なのです。
気の滞りは「気滞」といい、気が虚した(元気がない)状態では「気虚」といいます。いずれも循環を悪くする要因ですので、瘀血の原因になり得るのです。
例えば、精神的に緊張すると気が滞りその結果、後頚部が硬くなり血の巡りが悪くなって肩こりを発症します。また、老化と共に体力が減退して元気がなくなると気虚のために血の流れが障害されて瘀血が起きやすくなるのです。
東洋医学では、「気行則血行、気止則血止」といって「気が行けば、則血も行く。気が止まれば、則ち血も止まる」という意味の言葉があります。ここからもわかるように「気・血・水」は相互に関係し生体の恒常性を保つ三大要素と考えているのです。
以下に気虚、気滞、血虚、瘀血の臨床症状を記します。
気虚
元気の不足、機能低下と抵抗力低下が特徴。
疲れやすく元気がなくて無気力、息切れ、口数少ない、汗が出やすいなどの症状があります。老化、疲労、慢性疾患、体力減退なので起きやすいです。
舌診では、舌の色は淡白でボテっと腫れて大きく、舌に歯の跡がだきる場合もあります。
気滞
気が鬱滞している状態です。主に精神的なストレスや感情の抑鬱により起こります。肝気鬱結による事が多いです。
怒りや不満を精一杯堪えている状態で、抑うつ、イライラ、怒りやすい、いつも物事をくよくよ考える、喉の閉塞感や胸肋部の張ったような痛み、頭痛、顔面紅潮などの症状が見られます。
舌診では、舌の先端部が赤く、時に舌が震えています。
血虚
血が持っている全身に栄養を与え滋養する働きが低下して、体液と血液の不足が起こっている状態です。貧血、顔面が蒼白で痩せていて、皮膚に艶や潤いがなく、動悸、ふらつき、四肢のしびれや筋肉の痙攣が起きやすい特徴があります。
舌診では、舌の色が淡白で、これに陰虚が入ると舌が赤くなって乾燥します。
瘀血
瘀血の循環障害、血管内に瘀血の鬱滞する場所と、血管外に漏れて出血する場合とがあります。細絡や瘀斑、静脈の怒張が現れ、これらは特に顔面、口唇、舌頚背部、下肢に多く見られます。腹診では、へその左右のあたりに圧痛硬結が見られます。
舌診では、舌の色は赤紫で舌下の静脈は怒張しています。