発達性協調運動症。「出来る事」に制限はない。

DCD

発達性協調運動症、Developmental Coordination Disorderは、身体の動きを調節する脳の働きの発達に課題があり、様々な感覚を組み合わせた複雑な運動が苦手な傾向にあります。

まず発達性協調運動症の特徴としては主に、ボールを使った運動、器械体操、文房具、楽器が上手く使えないなどの症状がみられます。

人は体を動かす時に距離感や位置情報などを元に、強さ、速さ、タイミングなどを調整しつつ、多少のズレや誤差が生じたらその都度フィードバックしながら学習していくのです。これを「学習運動」や「協調運動」といいます。発達性協調運動症の場合はその部分が少し困難になってしまうのです。

やってはいけない事

協調運動がうまくできない子供さんに対して絶対やってはいけない事があります。

それはスパルタで根性論を強要する事です。「高圧的且つ強制的に、嫌がっても反復練習を行う事で本能に働きかける」みたいな理論は絶対にだめです。

脳には、タスクのメモのような役割があるワーキングメモリがあります。怒られる、ちゃんとしなきゃ、あれと、これと、それと、どれも…と、あれこれ無駄な事を考えていたらワーキングメモリが全て埋まってしまい、目的に当てる脳の処理能力が少なくなり余計に協調運動が乱れます。

技術習得に向けた然るべきリハビリと練習、指導、補助具の使用などが肝要なのです。

子供達が学校で困る事

・ボールを使った運動、器械体操

・なわとび、ダンス

・字を書く

・文房具、道具を使う

・理科の実験

・リコーダーなどの楽器演奏

日常生活で困る事

・靴紐を結ぶ

・着替える

・フォークやスプーンの使用

・自転車にのる

・物を落とす、ぶつかる、転ぶ

・ドアや鍵などを回す動作

字を書いたり、消しゴムを使ったりなど苦手な作業が簡単にできるよう練習するための方法がたくさんあります。

運動や体育などは皆んなの前でできなくて恥ずかしいと、傷ついてしまう子もいると思います。それに関しての対応は、本人、学校の先生、専門機関の指導者などと相談して慎重に進めていかねばならないでしょう。

大切なのは、本人の「できるようになりたい」という思いがあるならばそれを尊重する事です。少しずつ目標、課題を設定して家族、療育、学校、友達など、本人を主体として包括的に協力と見守りを行っていく事が理想的なのではないかと思います。

あと、体幹や筋肉を鍛えて全体的なボトムアップを目指すのはとても大切です。手の高緻動作が苦手なのに体幹の筋肉は関係ないのでは?と思うかもしれませんが、座って字を書くには姿勢が大切で、姿勢を維持するには体幹の筋肉が必要です。

例えば、運動が苦手で、靴紐を結ぶなどの手先の動きが苦手でも、ゲームが得意な子もいます。

「できない事がある」なんていうのは、その子のアイデンティティのほんの一部分です。できることがたくさんたくさんあります。まだ出会ってないだけで、上手にできること、得意な事もこの世にはたくさんあるはずです。

「できない事」は限られていますが、「できる事」に制限はないのです。