ひどく辛い大きな首肩こりを形成する小さな原因達。

最近、就寝中に首肩がとても辛くてたびたび起きることがある。左側の首肩が痛く、そして後頭部の辺りがなんとなく薄ら寒いような感じがするのだ。それはあたかも、後頭部へと続く血管が首肩の筋硬結により圧迫されて血流が遮断されているのではないか?と思うくらい嫌な感覚だ。もっとも、本当に血流が遮断されているのならば一大事であり、さらに大きな弊害が出ていてもおかしくないだろう。

今回に関しては、左の首から肩にかけて明らな筋硬結があり、その筋硬結を構成するに至る原因に心当たりがあった。

その原因の1つは「肘置き」だ。今、僕が仕事で座っている椅子には肘置きがないのだが良い位置に左だけ棚があり、左肘だけそこに乗せて事務仕事をしている。肘を肘置きに載せると言う事は、そのほうの肩が少し上に上がると言うことだ。肩が少し上がると言う事は、体が全体的に少しだけ傾くと言うことだ。体が全体的に少し傾くと言う事は、首や骨盤などは少し傾いた分バランスを取ろうとする。つまり、片方の肘を肘置きに載せるという1つの「自由」というか「わがまま」を許したことで、その負荷を全身が背負うこととなる。

2つ目の原因は、左右の視力の差だ。ここ最近、どうも右目の遠視が進んでいるようで、物を見るときには左目優位となり、かなり左目には依存していたため負担がかかっていたと思う。眼球運動を行うと、後頭骨と頸椎を結んでいる後頭下筋群が連動して硬くなる。よって、僕の左の後頭下筋群は右のそれと比べ硬く動きが悪く、血流も悪くなっていたであろう。

3つ目の原因は、普段見ているデジタルスクリーンの位置だ。最近デスクワークが増えたのだが、パソコンと同時にタブレットを用いる時がある。この2つを置いている位置が少しだけ左寄りなのだ。物の配置上、どうにも動かすことができずその位置に固定してしまっている。そのため、仕事中は常に左頸部に少しだけ回旋力が加わっているという状態になっている。

これらの事は1週間に数時間程度ならば恐らくそんなに問題はないだろう。ところが、1日に6時間を週に5日、それが3週4週、1ヵ月、2ヶ月と続けば続くほど、わずかな負担が確実に体に影響を与え、着実に健康を蝕んでいく。

どこかをぶつけたりひねったりしたわけではなく、中枢神経や内臓由来でもなく、特にこれといって理由が思いつかないにもかかわらず、筋肉の割と強い症状があって、それもここ最近急に発症したというケース。

このような場合、日常生活に何らかの変化を加えた可能性があり、日常生活における些細なことが原因である事が多い。例えば、机や椅子が変わったり、いつも見ているテレビ画面の向きが変わったり、怪我をして痛めた体の一部をかばっていたりなど。

また、僕のように視力の変化に気づかず知らないうちに負担がかかっていたという経年変化、いわゆる加齢によるものもある。これらは今すぐに目に見える形で症状が出るわけではない。小さな変化が少しずつ積もり、体のどこかに負担がかかって徐々に前後左右上下のバランスが崩れ、その崩れたバランスをリカバリーしようと別のところに負担がかかり、それが全身に波及することでいくつもの原因が複雑に混じり合い確固たる症状となって現れるのだ。

今回の僕の「左首肩の凝り」という1つの症状を形成しているのは首肩の筋肉の硬さだけではなく、左右の視力の違い、そこから来る片目の負担と後頭下筋群の凝り、首の左回旋に関与する首肩周辺の筋肉の凝り、キーボードやマウス動作に関連する手指及び前腕の筋肉の張り、高さのある肘置きを左のみ使用することで起きる左右のアンバランスなどが関与している。

こんな複雑な状態、一体どうやって治せばいいか?

簡単なのは全部その逆をやってみればいいのだ。左目ばかり使うのならば右目ばかり使えばいいし、左肘が高い位置にあるのならば右肘を高くすればいいし、画面が左にあるのならば、右にすれば良い。

…ちょっと乱暴な言い方だが「痛むことの逆をすると楽になる」というのは症状改善のヒントになる。

結局どうしたかと言うとまずは、左右の度を調整した新しいメガネを作った。次に、左肘を肘置きに絶対におかないようにした。そして、専用の台を購入しデジタルスクリーンの位置を調整した。後はプライベートでのスマホ使用時間をなるべく短くしたり、寝床に入る時間を1時間早めたり、デスクワークで疲れたときには頻繁に首、肩、背中の筋トレを行うようにした。

すると、3日目位から効果が出てきて、首肩の症状はだいぶ楽になった。

歳をとれば取るほど、レスポンスが悪くなり即効性は少なくなるかもしれないが、体にとって正しい行動をしていれば結果は割と早く出るものだ。体の痛みに対する施術も同じで、何度も施術を受けても症状が改善されない場合、アプローチポイントと方法が間違っている可能性がある。要はその痛みを作り出す元、その秩序に気づいていないのだ。無論、変形性関節症や自己免疫疾患のような器質的な変化や問題が根底にある場合は、徒手療法や鍼灸治療などが功を成さないこともあるだろう。だが仮にそうだとしても、日常生活の中においてもしかするとその症状を発症、もしくは増強する何らかの原因やヒントが隠されているかもしれない。

もし、何らかの慢性的な症状で苦しんでいる方がいたら「痛むことの逆をすれば楽になる」という言葉を覚えていていただきたい。すごい複雑な症状に見えるようで案外単純なことが原因で、意外と症状改善のヒントが身近なところに転がっている可能性がある。