「瀉血」や「メディカルカッピング」と「刺絡」の違い。

異なる意味合い。瀉血と刺絡について。

これは井穴という指先のツボから瘀血という溜った悪い血を出している刺絡の写真です。

瀉血と刺絡という二つの言葉がありますが、これらは異なるものであると私は認識しています。

「瀉血」とは増えすぎた赤血球を減らすために週に1~2回300から400ミリリットルもの血液を抜く事をいいます。※内科血液腫瘍内科 赤坂クリニック様のホームページより一部抜粋。

この場合は針を静脈(血管の太さ5~8㍉)に刺すわけです。
これは医師でないと行えません。稀に、自分で注射針を入手して血管に刺して血を大量に出してデトックスと言っている方もいるようですが、素人の方が行うのは、感染症、貧血など様々な悪影響を引き起こすリスクがありますのでとてもとても危険です。絶対に行ってはいけません。どうしてもやりたいならば「献血」に行くべきです。これに尽きます。


一方、刺絡で狙う血管は細静脈(太さ20~30マイクロ㍍、毛細血管(5~8マイクロ㍍)であり、それらの血管に三稜鍼という特殊な鍼を刺して血を出します。出血量はカップ1つにつき約2~3cc(ミリリットル)、多くても5cc。10個付けたとしても30ccです。(マイクロとはミリの0.001倍)
すなわち、刺絡はとても小さな小さな血管に滞った瘀血や、結合組織の間に溜まった夾雑物を外に出すという方法です。

なので刺絡と瀉血では、出血量、狙う血管、使う針、狙う箇所など全く異なるのです。


ちなみにメディカルカッピングという言葉がありますが、これは確固たる定義は僕自身よくわかりません。恐らくは医師が行う「刺絡」のような施術なのかと僕は捉えています。しかし、そこに東洋医学的な見方やノウハウがあるのかどうかはそれを行う医師の裁量にかかっていることは間違いないでしょう。

いずれにしても我々鍼灸師が行うのは「刺絡」です。

刺絡とは

刺絡は東洋医学的な概念で言うと、血の運行失調状態である血瘀の際に行います。血の運行がスムーズに行われないと様々な不調をきたすわけです。
血瘀を示す身体の変化は、舌(紫舌)、左下腹部(小腹急結)、脈(結脈、濇脈)などに現れます。他にも細絡や僕の経験上の指標があるわけですが、それらの情報を統合して然るべき急所に鍼を刺して溜った瘀血を出して血流促進を図ります。

人間は生きる上で食べたり飲んだりします。その中で、身体に入ったものは吸収されて血となり肉となったり、外に排せつされたりするわけですが、一部どうしても身体にゴミのようなものが残ってしまいます。それは、食品添加物などの代謝成分ややマイクロプラスチックなどの夾雑物です。

このようなものが身体のなかに蓄積していくと、日常生活のストレスと相まって、様々なアレルギー疾患、自己免疫疾患、痛み、痒み、何らかの不調の発症、長期的な不定愁訴に繋がってしまうのではないかと僕は考えています。

運動や筋トレ、ヨガ、マッサージなどで瘀血を散らす事はできるかもしれませんが、然るべき箇所から瘀血を出す唯一の方法は刺絡だけだと僕は思っています。

刺絡は副交感神経を優位にさせる。顆粒球を減らしてリンパ球を増やす。

こちらは福田稔先生と安保徹先生がお書きになった刺絡に関する書籍です。

ここには、刺絡を行うことでリンパ球の値が増えて顆粒球の値が減ったという事が臨床結果として記されています。
リンパ球の値が上がるという事は簡単にいうと免疫力が上がるということです。顆粒球は外敵から身を守る役割をしますがこれが死ぬと活性酸素となり、胃腸粘膜を攻撃したり悪玉コレステロールと結びついて酸化悪玉コレステロールになり動脈硬化を助長したりする原因ともなりえます。なので少ない方がいいと捉える事もできます。

リンパ球が高くて、顆粒球の値が低い状態を作るには副交感神経を優位にしなくてはなりません。

顆粒球は交感神経、リンパ球は副交感神経の刺激を感知します。※難病を治す驚異の刺絡療法 P129参照。
副交感神経とは、リラックスの神経です。これが優位になると、リンパ球が増加し免疫力が上がる、顆粒球減少、胃腸運動促進、血圧脈拍低下、血管拡張など身体にとって良い事が起きます。

逆に交感神経が優位になると、顆粒球増加、リンパ球減少、胃腸運動減退、血圧脈拍増加、血管収縮など身体にとって悪いことが起きやすくなります。具体的にいうと、顆粒球が増える事で活性酸素が増えて胃腸粘膜を攻撃し胃や腸の潰瘍などを起こしやすくなる、リンパ球が下がるので免疫力が下がる、胃腸運動が低下するので消化吸収が滞る、血管収縮により血の巡りが悪くなり内因性発痛物質が出やすくなり痛みや重だるさが出る、血圧脈拍が高くなるので循環器系に負担が掛かるなどです。

自律神経である交感神経と副交感神経はそれぞれ大切な神経ですが、メリハリが大切です。
長期的にストレスを感じていると交感神経が優位になる頻度が増えて上記の様な悪い影響が起きやすくなります。

爪の付け根のツボや背骨付近のツボは自律神経にアクセスしやすい箇所であり、それらに刺絡の刺激を加える事で副交感神経を優位にもっていくことが出来るのです。

実は、血を出す刺絡でなくとも血をださない無血刺絡という方法もあります。僕はこの術を創始者である脳外科医の長田裕先生の元で理論と技術を学び、臨床の現場で何度も行っています。

なので、当院ではただいきなり刺絡だけを行うのではなく、いくつかの手技、療法を行ってから刺絡を行います。
具体的には、マッサージでほぐして、マイクロ波で温めて、無血刺絡で刺激を加えて、吸い玉で吸い上げて、最後に刺絡を行います。

何らかの不調でお悩みの方は是非ご相談下さい。

病院では異常なし、でも辛い症状がある。病院で疾患が見つかって治療を受けているが全く変わらない。などでお悩みの方は一度刺絡を受けてみてはいかがでしょうか。

上記のように、何らかの不調の原因がストレスによる長期的な交換神経優位の状態や、長年身体に蓄積した瘀血のせいかもしれません。

但し、一切の西洋医学的なアプローチを遮断するというのはダメです。
稀に、西洋医学は信じられないという方もいます。気持ちは分かります。色んな病院をたらいまわしにされ、表面の症状を押さえつける薬をあちこちで処方されて薬漬けになった患者様を何人も僕は知っています。

それでも西洋医学的なアプローチを全て切ってしまうのはとても危険であり、症状回復の遠回りになることもあるのです。
自律神経も同じで、いくら交感神経の害と言っても、ずっと副交感神経が優位になり続けていたり、副交感神経の異常緊張、これはこれで良くないのです。
西洋、東洋二つの良い所を臨機応変に取り入れて一緒に最適な施術プランを考えていきましょう。

料金と施術時間について。

料金は初回のみ初診料1500円と施術代は13200円です。(税込)
美容鍼や、鍼灸治療を組み合わせる場合は手技により料金と時間が変わります。

時間は約60分です。