肺癌ステージⅣと無血刺絡。

日本人の死因第一位は悪性腫瘍すなわち癌であり、現代においては二人に一人が癌になり、三人に1人が癌でなくなるという。本当に憎たらしい。恨めしい存在である。

当院はお陰様で開業から様々な患者様との出会いがあり、お一人お一人に支えて頂いて、今日がある。その中で、癌を患っていらっしゃる方も中にはいた。

今日は肺がんと無血刺絡について書いていく。毎度のことながら、個人は特定できないとはいえ、症状などは多少ぼかして書いていく。その方はお背中の痛みを最初に訴えていらした。患者様自身筋を違えただけだと信じて疑わず、なぜ痛むようになったかの理由もしっかり分かっていると言う。どの部位が痛くて、どうすると痛みが増すのかなどを聞き取って動きを診た後に、どこの筋肉が痛んでいるかの目星をつけ、症状緩和が期待できる基本的な施術を行っていった。その結果、無血刺絡の刺激が一番楽になったと仰って下さった。無血刺絡を行うと完全に痛みが無くなると仰っていた。これは治りは早く、あと一回くらいで治るのではと思っていたが、次に日には痛みが元のように戻ってしまっていた。

身体に無理をかけていないにも関わらず、痛みが全く元に戻るというところに私は最初違和感を感じた。そこからほぼ毎日来てくださって施術をさせて頂いた。ほぼ毎回、無血刺絡を行と本当に楽になってお帰りになった。しかし、その日の夜くらいから痛みが強くなって翌朝には元に戻る。無血刺絡の刺激は筋肉、神経、血管、自律神経に働きかける事ができる。これで一時的に楽になってまた痛みが戻るという事はどこが悪いのだろうか…。それ以外で考えられるのは内臓だった。痛む上背部には何の臓器があるか、心臓と肺だ。一度掛かりつけの医師に相談をと促した。この方は以前ヘビースモーカーだったそうで、それでも数年前に受けた検診では肺は綺麗だと言われたそうで、そこから肺は問題ないだろうという思い込みがあったかもしれない。検査の結果は肺の癌でステージはⅣと言われたそうだ。それを聞いた瞬間、私自身時が止まったかのようにショックだった。

それからの事は色々と忘れられない事も多くあり、細かく書く事も出来るが割愛させて頂く。

この記事で伝えたいことは、血管、神経、自律神経に働きかける無血刺絡の刺激はステージⅣにも達した肺がんによる背部に起こる辛い痛みを、何の副作用も後遺症もなく和らげることができたということだ。仮にそれが半日程度だったとしてもそれは大きいと思う。「痛み」がある事で、そしてそれが多ければ多い程、強ければ強い程日常生活はしんどくなる。逆に「痛み」さえなければある程度日常生活は楽だ。もっとも人に依っては「痛み」以外にも「痒み」や「痺れ」など耐え難い症状もあるが著しくQOLを下げる要因はやはり「痛み」だ。

冒頭で、日本人の死因の第一位は悪性新生物(癌)と書いた。例え癌で余命数ヶ月といわれても、そこから20年生きて天寿を全うされたという話も聞くし、老衰でお亡くなりになって初めて身体に癌があった事が判るというケースも結構あると本で読んだことがある。

ある意味目指す「ゴール」はここにあると思う。でもそれは決して簡単ではないと思うし、上記のようなケースは非常にまれで運が良いケースともいえよう。でも「痛み」さえなければ(臓器や神経に癌の浸潤が見られその機能自体喪失していない状態で)、「苦痛」さえなければ気力も高く保つことが出来るだろうし、余命はもっと伸びるのではと、生きる気力が、人生への意欲が湧いてくるのではないかと思う。そのために病院では様々な緩和ケアや除痛を目的とする方法がある。我々鍼灸師も東洋医学をいかし、西洋医学とは違った視点から患者様の「痛み」、「苦痛」を和らげ、意識に登らせないような施術の模索、探求は常にしなくてはいけない私は強く思う。