コロナ後遺症の可能性のある後鼻漏に対しての刺絡と鍼。

後鼻漏とは鼻から喉にかけて鼻水が流れていく状態のことを言う。鼻をかんでも前から出ず後ろの喉に流れていくというような感覚。なぜこのようになるのかというと、① 粘膜の分泌細胞の増殖や機能亢進による② 粘膜分泌細胞の粘液線毛運動の機能低下による③ 粘性の強い鼻汁が増加する④ 鼻腔から上咽頭の知覚過敏などの原因が挙げられる。

今回の症例は、約1年前にコロナウイルスに罹患して、それ以降鼻の奥から喉にかけて常に鼻水が流れている不快感があって耳鼻咽喉科にて「後鼻漏」と診断された方に対しての施術である。

後鼻漏の主な原因としては副鼻腔炎だ。この副鼻腔炎の原因は、風邪ウイルスや細菌、アレルギー物質などだ。それらが副鼻腔の粘膜にひっついて炎症を起こす事で起きる。治療法としては、鼻腔の洗浄や抗菌薬、ステロイドの服用など。後鼻漏に関しても副鼻腔炎やはなたけなど別の疾患の鑑別を行うと共に、基本的には抗菌薬の服用が治療方針となる。

今回の症例の患者様だが、鼻の奥から喉にかけて鼻水が流れ落ちてそれを口から出さなと気持ちが悪いと仰っている。耳鼻科での診察では、鼻から喉にかけて炎症は見当たらないと言われている。

鼻水に関しては、健康な状態でも一日に約2~6リットル作られてそのうちの30%は鼻の奥から喉に流れ出ている。気にしていないだけで無意識に飲み込んでいるのだ。

厳密にいえば耳鼻咽頭部における炎症がない状態での症状となると後鼻漏ではなく、「後鼻漏感」というかもしれない。とてもセンシティブになってしまって強く意識してしまっているのだ。

耳鼻科での薬や、はたまたBスポット療法を他院で行っても一向に症状が改善しない。

Bスポット療法とは上咽頭部に塩化亜鉛などを塗布、擦過するという方法。それにより、上咽頭部の炎症が消失が期待できる。上咽頭部は風のウイルスや細菌などが感染しやすいところ。この部分に炎症が起きる事により、扁桃炎、上咽頭炎、IgA腎症、頭痛、かたこりなどにもつながってくるらしく、それらがBスポット療法で改善がみられるそうだ。

参考資料Bスポット療法(上咽頭炎、IgA腎症の治療)*新規の方は平日限定の治療 – 広島市佐伯区のみやけ耳鼻咽喉科アレルギー科 (miyake-jibika.com)

それこそコロナウイルスの後遺症や後鼻漏にも効果的だったケースもあるらしいが、必ず効くというわけでもないらしい。私的にもこのBスポット療法は後鼻漏に効果が期待できそうに思えていた。神経が必要以上に過敏になっている部分に刺激を加えて神経の鎮静化を図るとか、上咽頭部をこする事で出血させて(いわゆる瀉血)様々な症状を改善させる手技を行う医師の話を聴いたことがあるからだ。なので、Bスポット療法はこの患者様にとっても非常に相性がいい治療法なのではないかと思っていたのだが、改善が見られなかったようで残念だった。

では、当院ではどのようにアプローチしていくか。まず、鼻と喉の周りに0.15×15mmの小さな鍼を30本近く細かく浅く打っていった。そして、うつ伏せで、肩甲骨部を良く動かしてほぐす。それにより首肩まわりの血流を良くする。頸椎7番周辺をマクロ波で温める。鼻に交通している鼻動脈は外頸動脈の枝である。なので、首周辺を緩めて血流促進を図る事はとても重要だと私は考える。頭部に無血刺絡の刺激を行う。特に百会から1センチ後ろのカチューシャのラインがあるのだが、ここは脳の感覚野が部位の近くだ。ここを刺激することで異常に興奮している鼻と喉の間の部分の鎮静化を図るのが狙いだ。最後に首の後ろから刺絡を行う。下の写真はグロテスクではあるが、割と沢山瘀血が出た。

その後、暫くは症状がなくなったと仰っていた。以前と比べると少し楽になっているとのこと。まだ数回の施術しかしておらず、首の刺絡は初めてだったので今後も注意深く経過を見ていきたいと思う。

刺絡のスタンダードコース

(料金)13200円+初回のみ初診料1500別途

(コース内容)マッサージ、温め、無血刺絡、吸角、刺絡

(所要時間)一時間