今回は、先天性股関節脱臼による股関節の痛みです。

先天性股関節脱臼

生まれた時から、股関節が脱臼または不安定な状態を言い、女児に多いとされます。

男子よりも女子の方が関節の受け皿が浅いという性質や、リラキシンというホルモンの影響で骨盤周囲が緩みやすくなっているなどの影響が考えられています。
先股脱はその後、臼蓋形成不全といって股関節の受け皿の部分がしっかりと発達していないという状態になることもあります。
なので、発育時期や年齢に応じて然るべき固定やリハビリを行う必要があります。

症状

股関節が両方とも痛みがあり、両手に杖を持って支えながらではないと痛くみのため歩けないという状態でした。
特に歩き出しの一歩目が痛い、重心を掛けるのが辛いという症状です。

鍼で改善が見られた

以前、鍼治療で何日か連続で腰と臀部の筋肉に刺激をしてもらったらとても楽になったとのことでした。
こちらの患者様は私用で東京にいらっしゃっていて普段は関東ではないところにお住まいです。

そのため当院で続けて施術をするというのは難しいです。
はり治療で症状が改善した時の刺鍼箇所をお聞きしたところ、腰部、臀部とのこと。

割と強めの「響き」をあたえられてその後、電極をつないだ電気鍼を行ったそうです。

初回であまり強刺激はしたくない…

初回の患者様で明らかな跛行と強い症状があって、尚且つ明日来ることが出来ないすなわち継続施術が出来ない場合、あまり強い刺激を要する施術は避けたいのが実情です。

オーバートリートメントが懸念されるからです。

施術

なので、股関節周囲を緩めつつ、痛む患部に無血刺絡療法を行いました。
 
臀部、腰部の急所や神経の出口、神経血管の走行などに沿って皮膚表面に刺激を加えていきます。
次第に、皮膚表面が赤くなってフレアー現象が起きてきました。
これで一度刺激を止めて様子を見ます。

結果

起き上って頂き、先程辛かった立ち上がりと歩き出しの動作を行ってもらいます。
すると、かなり楽になったと仰って頂きました。

重心をかけても痛くならないとの事でした。
 
こちらの患者様は前述の通り、以前痛んだ時鍼の響きと電気鍼の刺激がとても相性が良かったという経験があります。
しかし今回は鍼を刺さず、深部で響きを与えるわけでもなく、電気刺激すら行っていません。

皮膚表面の刺激

ではなぜ症状が改善したのか？

無血刺絡の刺激で血管が拡張されて内因性発痛物質が散ってそれにより症状が改善したと思われます。

それともう一つ、以前大きな身体の方の腰痛の症例でも書きましたが、表皮上の神経に対する刺激は深部にも影響を与えうるのです。
皮膚表面に対する刺激でも、深部にある侵害受容器を興奮させる事は出来ます。

これはすなわち「響き」と同じことです。

皮膚表面を軽く掻くような刺激でも侵害受容器は興奮すると、はり灸理論の教科書82Pに記載があります。

その後

3週間後にまた東京で用事があったとのことで当院に寄って頂きました。

前回は両手に杖をお持ちだったのに今回は、杖無しで歩いてこられたとのことで、あれから調子がいいと仰ってました。
 
そのお姿を見て、お言葉を聞いてとても嬉しかったです。
個人差はあると思いますが、先股脱の患者様のケアに関して特殊な鍼の響きや電気刺激を使わなくても、ノーリスクで最大限の効果がだせるならばそれにこしたことはないのです。

鍼や刺絡は神楽坂東五軒町鍼灸整骨院へ。