40代女性 上腕骨外側上顆炎の症例です。
病院に通っているけれど一向に回復せず、安静にしていても痛むという状態です。
上腕骨外側上顆炎とは?
上腕骨外側上顆炎は使い過ぎで肘が痛くなる疾患です。
主に手首を反らす動作、バックハンドで痛むためテニス肘ともいいます。
外側上顆部に付着している伸筋群の張力で同部位に負担がかかり、痛みがでるという病態です。
施術方針。
まずは、外側上顆部の炎症を抑えることです。
これに関しては、病院で消炎鎮痛薬が処方されています。
次に考える事は「前腕伸筋群をいかにして緩めるか」です。
上腕骨外側上顆に付着している前腕伸筋群の頻回の牽引が原因で炎症が生じています。
そのため、前腕伸筋群の筋緊張緩和は必須なのです。
マッサージ、ストレッチなどを行いましたがあまり効果は見られませんでした。
その次は患部に対するアプローチです。
超音波で炎症細胞に治癒を促し、無血刺絡で血流促進を行いましたが、これもあまり効果的ではありませんでした。
意外な部位。
全身をほぐしながらある事に気付きました。
それは頚肩周囲の筋肉がとても硬く、頸椎の生理的湾曲が少ない状態という事です。
試しに、首回りをほぐして手で頚の反りを意図的に作ってみました。
すると、仰向けでいるだけで辛かった症状が少し和らいだとのこと。
もしも頚椎症からくる上肢の症状であれば、頚の後屈動作で痛みが強く出るはずです。
なので、頚から出ている神経にトラブルがあるわけではない事がわかります。
そこから、頚、肩、上腕部、特に三角筋部を入念にほぐしました。
それだけでも安静時痛が楽になりました。
まずは安静時を改善。次に運動時痛。
運動時痛の改善が次のステップです。
外側上顆の病変の場合、基本的には手首の背屈動作で痛みが出ます。
通常は前腕伸筋群の急所を押えると運動時痛が楽になる事が多いですが、今回はそうではありませんでした。
代わりに先程見つけた、三角筋や僧帽筋、項部の細かい筋群の急所や筋硬結部を指で抑えると背屈が割と痛みなく出来るとの事でした。
荷重をかけての運動はまだ先。
外側上顆炎のゴールは、荷重をかけての運動、実生活において痛みのない状態に至る事です。
ですが、今はまだ荷重をかけての運動は早いと僕は考え、ここで様子を見る事にしました。
なぜならば、効果を求めて先に進もうとしても、局所の細胞は傷ついている状態だからです。
ゆっくりリカバリーして、痛くない状態をデフォルトであると身体に認識させていかねばならないのです。
そいのため、状態にもよりますが治癒には細胞のターンオーバー周期と同じくらいの期間である3カ月くらいが必要です。
なぜ、離れた箇所で効果がでたのか?
病院でのキシロカインの注射やロキソニンの飲み薬、モーラステープなどの湿布薬などの薬理療法が功を成さない。
温め、超音波、マッサージ、電気治療器、レーザーなどの物理療法も効果的ではない。
そのような時は、全身を診る必要があります。
特に、神経、血管、筋肉、筋膜、経絡など。
患部と繋がりのある部位を触って、どこかに違和感や反応はないかを探るのです。
今回は、筋膜の走行上にヒントがありました。
筋膜のライン。
筋膜は正式には「ファシア」と言います。
これは人体のあらゆる組織の間に存在し、遠い所と近い所で繋がっているのです。
それには大まかなラインがあり、今回は外側上顆を通っている膜のライン上の硬結部位を緩める事で安静時痛と運動時痛を緩和することが出来ました。
患部を引っ張っているのは、前腕伸筋群だけではないのです。
もっと上の方にその大元があったりします。
一本のゴム紐のようなもので、硬くなって引っ張っている部位、玉になっている部位をほぐせば全体が緩んで余裕が生まれるのです。
その余裕がある分、負荷に耐える事ができるのです。
全身を包括的に診て触る事は整形のリハビリではできません。
なぜなら、「関係のない部位」とみなされるためです。
病院は、最先端の治療や、手術、検査、薬は優れていますし、物凄い価値があります。
しかし、一部を除いた慢性運動器症状にはあまり効果的な解決にならない場合も多いです。
もしも病院であまり効果が出ていなくて、辛い症状がある方は一度お越し下さい。
鍼、刺絡、整骨など症状緩和に期待が出来る場合があります。
是非、神楽坂東五軒町鍼灸整骨院へお任せ下さい。