日本人の10〜30%は亜鉛欠乏症です。
※日本臨床栄養学会 亜鉛欠乏症の診療指針2024より
謎の体調不良は亜鉛不足の可能性があります。
高齢者と子供は注意
特に高齢者は食が細くなり、消化吸収力も低下します。
よって、亜鉛不足に陥りやすいのです。
子供は身体の成長に伴って亜鉛の必要量が高くなります。
不足すると成長や発達にも影響します。
亜鉛欠乏は病気か?
血液検査で低値+症状あり、だと欠乏症とみなされ治療対象となります。
亜鉛は、体に必要な微量ミネラルです。
体内で作る事ができないため、食事で摂らねばなりません。
亜鉛の1日の摂取基準
男性→9〜9.5mg
女性→7〜8mg
亜鉛はなぜ必要なのか?
それは、体内にある300種類以上の酵素の働きに関係しているからです。
亜鉛は酵素の構成要素になっています。
酵素とは、体の化学反応をスムーズにするための補助的存在です。
多くの酵素が亜鉛を必要とし、不足すると機能低下が起きます。
亜鉛を必要とする酵素が関わる主な作用
DNA複製
タンパク質合成
古い細胞修復
成長
発達
皮膚の代謝
生殖機能
免疫機能
味覚の維持
食欲の維持
など。
不足すると起こる事
子供の低身長や発達の遅れ
傷が治りにくい
脱毛
不妊
風邪が長引く
味がわからない
食欲低下
など。
亜鉛と前立腺
前立腺に多く含まれる亜鉛が不足すると、性腺機能障害(男性不妊)の一因になります。
味覚と亜鉛
舌の上皮細胞には亜鉛が多く含まれています。
不足すると味覚障害に繋がります。
食欲低下
味がわからないから食欲が出なくなります。
そして亜鉛が直接、脳の食欲中枢に関係します。
視床下部と食欲
食欲と満腹を司る、摂食中枢は間脳視床下部にあります。
摂食中枢は内側野で、満腹中枢は副内側核です。
亜鉛は食欲を調整するホルモン(ニューロペプチドY, グレリン, レプチン)の働きに関わっています。
特に「ニューロペプチドY」は摂食中枢を刺激して食欲を増します。
しかし、亜鉛不足で合成がうまくいかないと食欲が落ちるのです。
セロトニンと亜鉛
セロトニンは「満腹感」や「気分安定」に関与します。
亜鉛不足だとセロトニン代謝が乱れ、食欲や気分に影響します。
心筋梗塞と亜鉛
心筋梗塞の患者さんは、血清亜鉛値が低い傾向にあることが解っています。(特にアジア人)
※Lui B Cai ZQ Zhou YM deficient zinc levels and myocardial infarction association Biol Trace Elem Res 165 41 50 2015より
コロナウイルスと亜鉛
新型コロナウイルスに感染した患者さんの血清亜鉛値が低く、重症化・死亡例ではさらに低い事も解っています。
※Yasui Y Yasui H Suzuki k et al Analysis of the predictive factors for a critical illness of COVID19 during treatment relationship between serum zinc level and critical illness of COVID19 2020 100 230 236より
慢性腎臓病と亜鉛
慢性腎臓病の患者さんは、血清亜鉛値が低いと感染症で入院するリスクが約2倍になります。
※Saka Y Naruse T Matsumoto J et al low serum zinc concentration is associated with infection particularly in patients with stage 5 chronic kidney disease medicated with proton pump inhibitors J Ren Nutra 31 579 85 2021より
亜鉛欠乏の診断
血清亜鉛値が60μg/dl未満で、原因不明の症状があると亜鉛欠乏と診断されます。
血清亜鉛値は通常の健康診断の項目には含まれません。
必要に応じて個別に検査するのです。
欠乏の原因
摂取不足→高齢、食事量減少、採食中心など。
病気→腸、肝、腎、糖尿病など。
薬や食べ合わせによる吸収妨げ。
土の変化
現代では、土壌の変化により亜鉛などの微量元素が減少しています。
それにより、農作物に含まれる量が少なくなっているのです。
つまり、食べ物自体が亜鉛不足になりがちなのです。
治療法
亜鉛を多く含む物を食べるか、亜鉛製剤の使用です。
(ヒスチジン亜鉛、酢酸亜鉛)
亜鉛が多く含まれる食べ物
カキ
煮干し
赤身肉
ビーフジャーキー
豚レバー
パルメザンチーズ
抹茶
カシューナッツ
いりごま
など。
消化吸収を妨げる食べ物
フィチン酸(小麦、豆類)
カルシウム(乳製品)
食物繊維
など。
薬では亜鉛をどれくらい補うか?
学童以降から成人→50〜150mg
幼児→25〜50mg
1日の摂取基準の5倍の量です。
早く血中濃度を戻すためにそうするのです。
3ヶ月から半年続けるのが一つです。
過剰に摂ると
鉄や銅の吸収が抑えられ、貧血などの副作用が起きる事があります。
2〜3ヶ月ごとに採血し、亜鉛、鉄、銅の値を確認する事が肝要です。
※サプリメントは含有量に注意して下さい。
慢性的な体調不良には鍼、刺絡が効果的な場合もあります。
お辛い方は神楽坂東五軒町鍼灸整骨院へお越し下さい。