慢性の咳と迷走神経。

「咳」、それは防御反応です。
異物やウイルスが入り込んだ際、それを排除するために発動するのです。

咳のスイッチ

咳を起こすスイッチとなるのは、気管や気管支の内壁にある咳受容体です。
この咳受容体が異物を受け止めて迷走神経に伝えます。
迷走神経から咳中枢のある延髄を介して大脳に情報が伝わることで咳が起きるのです。

受容体

咳の受容体は色々なところにあります。

喉頭
気管
気管支
食道
肺を覆う膜
心臓を覆う膜

迷走神経

咳の受容体があるところには、迷走神経が枝を伸ばしています。
迷走神経は、臓器の働きを制御したり感覚を脳に伝える働きがあります。
受容体と迷走神経がある臓器への刺激で咳が起こる事もあるのです。

長引く咳

咳の受容体が気道の炎症や痰などにより刺激を受け続けている事が原因である事が多いです。
いくつかの要因が重なり合って咳が長引いている可能性があります。

原因の特定が大切

風邪など、感染症による咳は約3週間で治ります。
長くても8週間で止まります。
なので、8週間以上咳が続いたら慢性咳嗽と言われます。
慢性咳嗽の原因は、感染症以外です。
肺炎、肺がん、肺結核、COPDなどを疑います。

慢性咳嗽

海外で、慢性咳嗽がある人とない人それぞれ2800人を対象とした検査があります。
それによると、慢性咳嗽がある人はない人に比べて肺炎感染が2.2倍、死亡率が1.7倍と高い事が解りました。
※Landt et al ERJ open Res 2024より

咳の原因あれこれ「副鼻腔炎」

鼻の周りで炎症が起こる副鼻腔炎は、炎症が気管支にも広がる事があります。
それにより、気管支の粘膜が腫れぼったくなったり痰が溜まったりします。

アトピー

アトピーでも気管支に炎症が起こり、咳が誘発される事があります。
これをアトピー咳嗽といいます。

睡眠時無呼吸症候群

呼吸が止まって気管に圧がかかる事で炎症が生じ、咳が起こります。
低酸素状態がさらに炎症を助長します。

逆流性食道炎

胃酸の逆流が食道やのどの入り口にある咳受容体を刺激する事で咳が起こります。

心不全

加齢により心臓の働きが悪くなる事で肺に血液が溜まりやすくなります。
それを痰として外に出そうとして咳になります。

咳反射低下

咳の原因があるならそれを治さねばなりません。
ですが、咳が全く出なくなるのも困ります。
なぜなら咳は防御反応だからです。
老化や脳の病気で咳反射低下が起こると、誤嚥性肺炎につながるため注意が必要です。

咳による生活への影響

仕事や家事、学業に集中できない
尿漏れ
肋骨骨折
睡眠障害
会話が困難
など。

稀に失神もある

咳で肺の内圧が上昇する事で静脈の血液が心臓に戻らず、脳への血流が低下して失神が起こるのです。

咳検査

どんな時に咳が出るかの問診。
ぜーぜーひゅーひゅーの喘鳴を聞く聴診。

血液検査

白血球数が増加→肺炎や結核。
IgE抗体が増加→アレルギー。
好酸球が増加→ぜんそく。

痰の検査

好中球が増加→感染症、副鼻腔炎、COPD。
細菌や癌細胞→感染症や癌。

副鼻腔炎CT

異常な陰影があれば副鼻腔炎が疑われます。

胸部X線検査

肺がんや心不全でも異常な陰影が見られます。

胸部CT

異常な陰影があれば気管支拡張症やCOPDが疑われます。

スパイロメトリー(呼吸機能検査)

努力性肺活量を調べます。
息を最大限吸ってから一気に吐き出した時の息の量です。
少ないと間質性肺炎が疑われます。
1秒率を調べます。
息を一気に吐き出した時の最初の一秒間の量÷努力性肺活量で割り出します。
少ないとCOPDや喘息を疑います。

FeNO(呼吸一酸化窒素濃度測定)

吐いた息に含まれる一酸化窒素(炎症に伴い発生する物質)濃度を調べます。
濃度が高いと喘息が疑われます。

診断的治療

これらの検査を行なっても原因がわからない時は、頻度の高い病気の治療を行います。
例えば、痰が多ければ副鼻腔炎の治療など。

慢性症状には鍼や刺絡が効果的な場合があります。

お辛い方は是非、神楽坂東五軒町鍼灸整骨院へお越しください。