なぜ車や船で酔い、嘔吐するのか?

酔ってしまうために、車や船が苦手な方もいると思います。

なぜ酔うと気持ちが悪くなって嘔吐してしまうのか以下に記します。

予測できない状況

車では基本的に、運転手は酔いません。

その理由は、すべて自分でコントロールしているため動きの予測が出来るから酔いにくいのです。

動いている時の情報処理

脳では常に様々な情報を処理しています。

その中でも大事なのが「空間の把握」と「自分の体が今どうなっているのか」です。

体の位置感覚は痛感覚よりも優先順位が高いのです。

空間と身体の位置の把握は、視覚、体幹の筋、三半規管、小脳から送られてきたデータを統合して脳が認識します。

三半規管とは、耳の奥にある身体の傾きを検知する器官です。

小脳は体勢バランスを司る脳の部位です。

情報過多、情報の整合性が取れない時に脳は混乱する

乗り物で、運転手は基本的に酔わないけど、なぜ同乗者は酔ってしまうのでしょうか。

それは、この先の道とそれに合わせた運転手の操縦の予測がつかないからです。

例えば右に曲がる際、視覚では右カーブを認識しても、遠心力を受けて体や三半規管は左に倒れます。

視覚は右に曲がっている情報を脳に送りますが、半規管や体幹の位置覚は左への重力情報を脳に送ります。

これが何度も何度も繰り返され、ましてや下手な運転手の操縦であれば尚更、脳は多すぎる情報を適正に処理できず混乱するのです。

脳が混乱すると自律神経が乱れる

自律神経はリラックスの副交感神経と、緊張の交感神経の二つです。

通常、副交感神経と交感神経が共に優位になる事はありません。

ところが、脳が混乱すると両方同時に優位になります。

つまり、今どういう状態か判らない、けれども緊急事態であると判断するのです。

自律神経と嘔吐

自律神経の最高中枢は間脳の視床下部ですが、調整のために脳幹部の延髄に集約されます。

延髄は嘔吐を司る最高中枢でもあります。

脳が混乱して自律神経が両方優位になる事は、緊急事態であると身体は判断します。

その結果、「内容物の除去を行って命を守る」という反射により、嘔吐中枢が刺激されて嘔吐が起きるのです。

酔わないためには

①抗ヒスタミン薬を飲む。

ヒスタミンは吐き気を伝える神経伝達物質です。それをブロックするのが酔い止め薬です。

②最初から最後まで目を閉じる。

脳に入る情報量を少しでも少なくして混乱を防ぐために視覚情報を遮断します。

③自律神経を整える。

空腹、寝不足、満腹、疲労、冷え、二日酔い、喫煙後すぐなどの状態は自律神経が乱れやすいです。なるべくニュートラルを保たねばなりません。

④慣れる。

これは乱暴な方法ですが、そのうちに慣れます。

「慣れる」のメカニズム

右に曲がったら左に遠心力がかかる、移り行く景色、ハンドルのタイミングや運転手のクセが学習されれば酔わなくなります。

なぜなら、半規管、視覚、体幹感、小脳覚など全てで整合性が取れれば混乱しなくなるからです。

脳が慣れてくれれば過剰反応も混乱も起きず、緊急事態にもならないのです。

なぜ、フィギュアの選手はスピンをしても目が回らないのでしょうか?

それは、神経の興奮を抑えるGABAが分泌されているからです。

過剰で無駄な神経の興奮や情報はそのうち遮断されて捨てられ最適化が起こるはずです。

確かに、早期の酔い克服は難しいです。

まずは酔い止め薬の服用、事前のルート確認、体調管理、乗車から降車まで目を決して開けないことなどから試してみると良いと思います。