山岳遭難事故による死者や行方不明者は年々増えています。令和5年度には335人にものぼります。
※出典 警察庁生活安全局生活安全企画課 山岳遭難の概況など
登山中に命に関わる重篤なトラブルとしては、高山病、脱水症、低体温症が挙げられます。
低体温
低体温症とは、生命を維持する臓器の体温が35度以下に下がった状態のことを言います。本来は37度から37.5度に維持されているのが望ましいのです。
山岳遭難死の原因で外傷に次いで2番目に多いのが低体温症で、死因の14.8%を占めます。低体温症の死亡者が1番多い季節は冬ではなく春です。雪のせいで正しい登山ルートが見えにくく、道に迷ってる間に低体温症になってしまうのです。低体温症になるのに標高は関係ないのです。
低体温症の症状は、寒さによる震え、元気がない、歩くペースが遅れる、受け答えに時間がかかる、などです。低体温症の怖いところはいつ発症しているのか、症状に気づきにくいというところです。
内臓の温度を上げるためにはまず食べることです。エネルギーを補給すると体の中で熱を生産します。エネルギー効率が1番良いのは炭水化物です。
あんぱんなどがオススメです。なぜならあんこにはブドウ糖が入っていてブドウ糖はすぐに熱を作るのに役立つからです。
それに、パンにはデンプン物質が入っていてデンブンはゆっくり熱をつくるのに役立ちます。
すなわちアンパンは、ブドウ糖で短期的に体温を上げつつ、デンブンで長期的に体温を上げる2段構えになっているのです。
あとは、寒いと感じたらしっかりとしたウインドブレーカーを着る、テントを建てて保温に努めるのも一つです。湯たんぽを活用するのもおすすめです。あらかじめお湯を水筒に入れておき、そのお湯を湯たんぽにいれるのです。大切なのは当たる場所で、手足とかではなく胸を温めてください。心臓を温める事で暖かい血液を全身に送り届けるのです。
脱水症
脱水症になると熱が逃げにくく血流が悪かなり、熱中症の一因にもなります。さらには心筋梗塞、脳梗塞につながる恐れもあります。女性の登山客はトイレを気にして水分補給をあまりしない事で発症しやすいので注意が必要です。
水分補給は、山に登る前から行います。なせまなら寝ている間に身体が乾いていて、起床時にトイレにいく事で更に水分が失われます。なので朝は水分量がマイナスの状態からスタートするのです。なので朝食以外で500ml水分を摂るようにして下さい。これならば、起床から登山するまでに2回以上トイレに行ってちょうど良いくらいの水分量になります。
登山中の水分補給量ですが、30分から1時間毎に100から200ml(コップ1杯)飲むようにして下さい。
汗をかいているなら塩分摂取をしつつ、トイレは我慢してはだめです。
高山病
高山病は標高2500メートル以上で発症する病気です。
症状は頭痛、吐き気、疲労感、めまい、ふらつきなどです。重症化すると肺に水が溜まって呼吸困難を起こしたり、脳がむくんで意識を失ってしまったりなど命に関わることもあるので注意が必要です。
なぜこのようなことが起こるか?
人間は酸素が少ない環境では、低酸素環境応答といって呼吸回数を増やして酸素をたくさん取り込もうとします。体が慣れてない状態で、急速に酸素が少ない環境に行くことで低酸素環境応答がうまく働かず、酸欠により体調不良を起こすのです。
たとえ、標高2000メートル級の低い山でも一気に上がると高山病発症するリスクがあります。高山病は高さの関係ではなく、酸素の薄い環境に体がきちんと順応するかどうかがポイントなのです。
そのため一気に上まで上がるロープウェーは注意が必要です。
高山病を防ぐ1つの方法として、肺を広げると良いです。
方法は、人差し指を立てて腕を伸ばします。その人差し指に届くようにフーーっと息を吹きます。この時、ちゃんと人差し指に息の風が当たるように強く吹いてください。これを繰り返すことで気道が広がり、はいの末梢にある肺胞が広がり酸素を取り込みやすくなります。
血中酸素濃度が低い方に上記の努力呼吸をやってもらうと改善が見られる可能性が高いです。
持病と登山
高血圧、糖尿病、高コレステロール症などの方は登山するときに注意が必要です。登山では体が冷えたり、低酸素状態になったり、無理して体を動かす事もあり、心臓にかなり負担がかかります。生活習慣病のある方は、動脈硬化が進みやすく血管がもろいという特徴があります。そのため、40歳以上で生活習慣病のある方は登山をする前に必ず病院を受診し検査を受け、主治医に相談するようにして下さい。そして決して無理をしないことです。
※山の事故を防ぐ6つのポイント
①事前の情報収集
②無理のない登山計画
③登山計画書の作成と提出
④適切な服装と持ち物
⑤冷静な状況判断
⑥下山こそ注意
※出典 政府広報オンライン 山の事故を防ごう!登山を楽しむために知っておきたい安全対策より