瘀血と難治性疾患。

「難治性の疾患には瘀血が関与している」と、昔の中医学者は考えていました。

「久病必有瘀、久病多瘀」これは「慢性疾患、難治性疾患など治りにくい病気がある時そこには必ず瘀血が関わる」という意味です。

また、東洋医学では「不通則痛」という言葉もあります。これは、通じざれば、すなわち痛むという意味です。

身体のどこかに瘀血(血の巡りの悪い部分)がある事で血管の循環に支障をきたし、それが痛みの原因になるのです。これに対して、鍼を打つ事で気血の鬱滞を散らして通りをよくするというのが瘀血に対する基本的な鍼の治療方針なのです。

局所的な瘀血による何らかの痛みを解剖生理学的に考えると、血流が悪くなる事で血管壁から内因性発痛物質が出てきて局所に重だるさや痛みをもたらしている状態であるといえるでしょう。

例えば坐骨神経痛と瘀血の関わりを説明するならば、臀部の筋肉に繰り返し負荷がかかって硬くなり、その下にある坐骨神経の周りの血管の血の巡りが悪くなって発痛物質により、坐骨神経の周辺領域で痛みを感じているのです。

痛みと重だるさの他に痺れも出てくるようだと、坐骨神経の外側の膜が血流不足により傷んでいる事が考えられます。痛みと痺れが出る周囲に高頻度で負荷がかかっているため、慢性的に血流が悪くなりやすく、傷んだ組織細胞の回復が遅れていて坐骨神経痛が慢性化していくのです。

「日本人の約半数近くは瘀血のために病み、瘀血が死亡原因にもなっている」と、医師の西田皓一先生は自身の書籍で著しています。※瘀血を治す 6頁より引用

厚生労働省の統計による日本人における三大死亡原因は、悪性新生物、心疾患、脳血管障害です。

癌はひとまずこの記事ではあえて触れずに進めます。長くなるので。

心疾患と脳血管障害は循環器の異常が関係している、すなわち血の巡りの悪さ、瘀血が関わっている疾患といえます。

瘀血は基本的に、普段の生活習慣により形成されます。身体を冷やしていたり、脂質、糖質、カフェイン、薬剤などを日頃から多く摂取していると必然的に身体の代謝機能が落ちて、血液内に不純物が増えて、血の巡りが悪くなり、それが慢性化するのです。

更に精神的なストレスや、自律神経のアンバランスも瘀血と密接な関わりがあります。

しかしこれらは、特に慢性化してしまうと瘀血を形成する生活習慣が当たり前になってしまい、何が悪いのか自分でもわからなくなってしまうのです。

そのため、なるべく早くに瘀血の兆候に気づき、生活習慣を見直さねばならないのです。

瘀血は東洋医学の概念です。そのため、東洋医学には瘀血の存在を知る方法と、積極的な対処法があるのです。

これから瘀血の記事を通じて、少しずつ言葉を置いていきます。