上咽頭擦過療法(Bスポット療法)と自律神経失調について。

上咽頭擦過療法なる治療法がある。これは怪しげな民間療法ではない。医師しか行えない、歴とした治療手段の一つなのだ。あまり聞きなじみのない治療法ではあるだろうが、NHKなどで、コロナウイルス感染症の後遺症外来の様子が取り上げられた際、この上咽頭擦過療法を行っている場面がテレビで映っていたのを見たことがある。

さて、上咽頭擦過療法とはその名の通り、鼻の奥にある上咽頭部を適切な濃度に希釈した塩化亜鉛溶液をしみこませた綿棒で擦過するというものだ。人に依ってはそこから大量に出血する場合もあるという。

この治療法はどのような病症に効果があるかというと、上咽頭の炎症が関連する鼻や喉の局所症状、神経内分泌系の病気、自己免疫系の病気などだ。

風邪などを契機に上咽頭部に炎症が起こり、それが慢性化してしまう。上咽頭部が慢性的に炎症をおこしていることにより、迷走神経に多大な負荷が掛り続け、迷走神経支配領域に何らかの不具合が生じる。迷走神経とは、内臓運動や内分泌系に関与すると共に、副交感神経の80%を担うので全身に影響を与える。

なので、迷走神経に不具合が生じると自律神経失調の様々な症状が身体のどこかで現れる事になる。その、「様々な症状」に対して、薬や鍼など対処療法を行っても一向に効果がない場合、この上咽頭擦過療法を受けるかどうか、視野に入れてみるとよい。

身体の不調や痛みなどの症状の原因は局所にあるのではなく、「上咽頭部の慢性炎症」が原因である。そのため、上咽頭部への瀉血を行い炎症を取り除くと共に、迷走神経にたまった神経の負荷を発散させて、自律神経失調による様々な全身症状を改善の方向へ導く、というのが上咽頭部擦過療法の目的なのだ。

しかし、上咽頭擦過療法をいくらやってもらいたくても、それを行う医師が上咽頭擦過療法が「適している」と判断しない事には受けられない。例えば、鼻の奥の上咽頭部を診て炎症や腫れが無ければ必要なしと判断される可能性もある。

自律神経失調による辛い全身症状があり、検査をしても特に異常はなく原因は見当たらない、対処療法の投薬や東洋医学の鍼、整体も効果がない場合、次の方策としては「なぜ、自律神経が強くかき乱されるのか」という生活における根本原因を探ってそれを排除するという事をしていく必要がある。

それは次回に記す。↓

ポリヴェーガル理論。仮死状態に関わる第三の自律神経と「不適切な関り」 (h5seikotu.com)