感覚について。

感覚は大脳皮質の感覚野で生じている。しかし、主観的体験としては大脳皮質にではなく刺激を受けた受容器の部分に感覚を生じる。例えば、お湯を触って手が熱いとか。伝導路の途中を刺激した場合も同様でその伝導路の起始部にある受容器に感覚を生じる。これを感覚の投射という。

当たり前だが、刺激の強さを大きくすると感覚の強さも大きくなる。

一般的に、持続的な刺激は次第に弱く感じるようになる。これを感覚の順応という。触覚や嗅覚などは順応が速く、痛覚は順応が起こりにくく時には痛覚が増す場合もある。痛覚が身体の防御機構の一つとして働いていることを考えると、これに順応が起こりにくいということは、危険と身体の損傷を即座に脳に伝えるという意味において都合がよいとは考えられる。しかし、様々な検査で異常がないにもかかわらず局所の痛みがなかなか取れない、すなわち順応しずらいというのは都合が悪い。

五感を通じて感覚受容器で受け取られた感覚情報は、大脳皮質の感覚野(一次感覚野)に伝えられて感覚を起こす。感覚野は感覚の種類によって、体性感覚野(頭頂葉)、視覚野(後頭葉)、聴覚野(側頭葉)、味覚野(頭頂葉)などがある。

感覚野に伝えられた感覚情報はさらに、大脳皮質の連合野に送られて、そこの神経細胞で処理されて連合野に蓄えられている過去の感覚記憶と照合されて感覚の性質を知ることができる。すなわち、刺激の性質を知覚して認識するのだ。

大脳皮質の連合野が働くと、刺激が与えられてなくても感覚を空想することも可能となる。だが時として、刺激を正確に認識することなしに錯覚することもある。

感覚情報は大脳皮質感覚野にだけではなく、視床下部と大脳辺縁系にも伝えられる。感覚情報によって視床下部と大脳辺縁系が働くと情動が生じるので感覚情報は知覚や認識とは関係なく情動反応を起こすこともある。「嫌だ」とか「嬉しい」などは大脳辺縁系。汗がでるとかドキドキするとかは視床下部の働き。

皮膚感覚には一般的に触覚、温冷覚、痛覚がある。皮膚表面にはこれらが点在している。どの部位の皮膚かにもよるが、平均すると皮膚1センチあたり、触覚点25 温覚点1~4 冷覚点2~13 痛覚店100~200である。

触、圧覚について。

圧覚は圧迫されたり引っ張られたりすると生じる。皮膚に変形によって触点が刺激されて起こる。メルケル盤とルフィニ終末は順応が遅く圧刺激が長時間続いてもインパルスを発射し続けている性質があり、強度検出器の機能を果たす。マイスネル小体と毛包受容器は刺激の働きに応じて反応し、刺激の動きが止まると圧刺激が続いていも応じなくなる性質を持ち、速度検出器の機能を果たす。パチニ小体は振動刺激に反応する最も順応の速い受容器である。これらの受容器からの情報を伝える神経線維はAβ線維だ。

温度覚について。

冷点と温点とだと冷点の方が密度が高い。皮膚に加わる温度刺激がある範囲内にあると、温覚も冷覚も起こらない。33℃くらいがそれにあたり、これを無関温度という。温度受容器は温受容器と冷受容器がある。これらはルフィニ小体やパチニ小体のような特定の受容構造を持たない自由神経終末である。皮膚温が一定に保たれている時は冷、温受容器はその皮膚温に対応した一定の発射頻度で持続性に活動している。皮膚温がある範囲内で低下すると冷受容器のインパルスは増加して、温受容器のインパルスは低下する。温冷の温度受容に関する神経線維はAδ線維や無髄のC線維である。