手根管とは手首にある、骨と靱帯で囲まれた管というか隙間というか領域です。その中には、指を動かすための神経、指を動かすための腱、腱を包むための滑膜などがあります。
この、指を動かす神経を正中神経といい、何らかの原因により正中神経が圧迫されると、親指、人差指、中指、薬指の親指側半分の4本に痛みや痺れ、動かしにくさなどの症状がでます。これを手根管症候群といいます。
さらに手根管症候群が悪化していくと、親指の付け根の筋肉が痩せ衰えます。これは、健側と比べても明らかに痩せてしまうのです。なぜ痩せるかというと、親指を動かす正中神経が麻痺して筋肉が萎縮するためです。
もしも、ボタンをうまくかけれない、小銭を拾いにくいなどの症状が出てきたら手根管症候群の初期症状かもしれません。気になる場合は早く病院を受診して治療を開始すべきです。
手根管部に影響が加わり正中神経が圧迫される原因はいくつかあります。
例えば、スマホなどの長時間使用で手を酷使する事で滑膜が浮腫んだり、手首の骨折後の変形治癒により手根管の断面積が小さくなるなどの要因があげられます。
手根管症候群の初期の神経症状は、上記の3本指に痺れが出る程度なのですが、症状が進むと手首を曲げた時に痺れや痛みが強く出るようになります。寝ていても痛みと痺れで起きてしまうくらい症状が強く辛い場合もあります。
病態が進行すると、親指の動きが制限されて物を摘む力が失われます。親指と人差し指を合わせて作る「OK」サインの「O」の字の丸が綺麗につくれなくなります。正中神経麻痺が生じると、丸が作れず涙のような形になる事からティアドロップサインと呼ばれます。
さらに病態が進行すると、痛み、温度に対する感覚がなくなる事で、やけどや傷に気づきにくくなります。
手根管症候群発症につながる主な動きは、手首を曲げたり反ったりする動作です。
そして、1日に4時間以上のパソコン作業をする人は平均的な人と比べて手根管症候群の発症リスクが2倍近く増える事がわかっています。
※出典 Computer and tunnel syndrome A meta-analysis Shiri Rahman et al Journal of the Neurological Science Volume 349 Issue 1 15 19 2015
手根管症候群の早期発見に役立つセルチェク方法がいくつかあります。
①チネル兆候
手首の真ん中(手根管部)を指でトントン叩いてみる。その時にジンジンと痛みや痺れが出るようなら神経が障害を受けている可能性が高いです。
②ファレンテスト
手首を曲げて両の手の甲を合わせた際に、痺れや痛みが出るかをみる。
手根管症候群は夜中から明け方に症状が出やすいです。そして、正中神経支配の4本指の中で、薬指の親指側半分が痺れてる場合は8から9割の確率で手根管症候群と考せます。
もしも手根管症候群と診断されたら、まずは手首を守る装具をつける事が大切です。装具、サポーターなどで患部を保護、負担を軽減するのです。
痛みが強い場合、病院ではステロイドの注射もあります。ステロイドの効果は約3ヶ月程度と考えます。なので、一年に3回以上かステロイドの注射をする、尚且つ日常的生活が大変という場合は手術も検討する必要があります。
手術では、横手根靱帯を切る事で正中神経にかかる圧を逃すというアプローチを行います。
手根管症候群は、早期であればセルフケアでリカバリーできる可能性もあります。
負担の元となる動作を減らす、パソコン作業時に手首まくらを使用する、サポーターをつけておく、手首のストレッチを常日頃から行う、温めるなど。
手首のサポーターは仕事中はできないという方もいると思いますが、寝ている時だけでもいいからつける事で正中神経の圧を逃して負担を和らげることができます。
ストレッチは、手のひらを上にして肘を伸ばし、反対の手で指を下に曲げて(指を背面に反らす)手のひら側を伸ばすのです。これを行う事で血流が良くなり、手根管部の圧を逃す事ができます。
痛んだ細胞を回復させるには栄養が必要です。その栄養は血液により運ばれるので、血流はとても大切です。
気になる症状をお持ちの方は是非、保護、血流促進に努めてみてください。