背骨
年をとると身体になんらかの加齢性変化が生じます。
背骨の変形はその最たるものです。背骨が曲がり姿勢が悪くなってきている人は、必然的に年齢が進めば進むほど増えます。50歳では19%未満ですが、80代では69%にものぼるのです。
※出典 Murata S Hashizume H Tsutsui S et al Scientic Reports 2023
背骨の変形が起こると圧迫骨折や脊柱管狭窄症などの怪我や病気が発症しやすくなりす。潰れたり変形した骨は二度と元に戻りません。
そして、背骨が前側に変形すると身体自体が前屈みになり胃を圧迫してしまう事で、胸焼けや逆流性食道炎などの胃腸症状が出る事もあります。
背骨が変形しているかどうかを簡単に判別する方法があります。それは、立った状態で壁に背をピタっと付けるのです。その際に、後頭部、肩、仙骨、かかとが壁にくっついていればとりあえず合格です。
この時に、どう頑張っても後頭部が壁にくっつかないならば、背骨の圧迫骨折や変形を起こしている可能性があります。気になる方はなるべく早く整形外科を受診して下さい。
大切な事は「筋肉をつける事」「同じ姿勢を長時間取らない事」「いい姿勢を保つ事」です。
「筋肉をつける事」に関しては、個別の筋肉を鍛える筋肉トレーニングも重要ですが歩く、走るのがおすすめです。特にランニングなどの走る動作は身体の筋肉を満遍なく使われるとともに、背骨を守っている大きな筋肉が特に活性化します。長く走るにはある程度の筋肉と肺活量が必要で、そのためには正しい姿勢でないとないといけないのです。すなわち、日々、少しずつでも距離を伸ばしてランニングをしていくことで、筋肉、姿勢、肺活量の3つが同時に鍛えられる事で、自ずと必要な筋肉量が培われていく事が考えられます。
「同じ姿勢を取り続ける」のは身体にとってよくありません。赤ちゃんと大人で筋肉の硬さを比べると、当たり前ですが赤ちゃんの方が柔らかいです。なぜか?それは赤ちゃんの場合、細胞が成長段階にあり柔軟性があるとか、水分量の違い、大人は立位保持による荷重ストレスなどの影響など色々な仮説が思いつきますが、赤ちゃんの筋肉が大人より柔らかい1番の理由は「常に動いている」事にあります。
赤ちゃんは、まだ神経と筋肉が発達していないため、常に身体を動かしてフィードバックを得て学習しているのです。そのため、基本的に常にどこかが動いています。大人からしたら「無駄に動いている」と思うかもしれません。しかしそこが盲点で、大人は「無駄に動きたくないからこそ同じ姿勢を取りがち」になってしうのです。同じ姿勢が続くと筋肉と関節に負荷がかかり、それが長い年月を経て骨の変形、身体の慢性痛に繋がるのです。なので筋肉、特に背骨周辺の筋肉を柔らかくしたいならばなるべく背中や肩甲骨、腰などを頻繁に動かす事です。周りからは「落ち着きがない」と思われるかもしれませんが、身体にとっては「常にどこかを動かしている状態」は正義なのです。
健康な背骨を長持ちさせるには、「良い姿勢をとる事」もまた肝要です。
そもそも良い姿勢とはなにか?良い姿勢は筋肉が創るのです。筋肉が頑張る事で良い姿勢をキープするので、言うなれば良い姿勢のキープは筋トレのようなもので、ある意味「苦行」なのです。良い姿勢を保つには「少しの苦痛を伴う」とまず認識を改めねばならないのです。
苦行は身体に悪いのではないか?と思う方もいるかもしれません。では逆に「悪い姿勢」はどうでしょう?悪い姿勢は確かに楽です。なぜなら筋肉が休んでいるからです。ですが、関節と靭帯にはその分負担がかかります。筋肉の支えを失うと背骨と背骨の間の関節に多大な負荷がかかります。そして関節を支えて骨同士を繋ぎ固定する役割をもつ「靭帯」にも負荷がかかり、靭帯が弱ったり傷んだりします。すると骨を正しい位置に固定する力が弱まり、骨と骨の位置が悪くなり、それが積み重なると痛みや骨の変形の加速、関節における柔軟性と耐久力の低下を招くのです。