人はなぜタバコを美味いと感じるのか、そしてそれが習慣化するのか。
もっとも現代において、特に先進諸国の喫煙率は減少傾向にある。
だが、いまだにタバコを吸わないとやってられないという人達が一定数いることも確かだ。
ニコチン受容体
そもそも、生まれて初めてタバコを吸った時に「美味い!」と感じた人はいないはずだ。
なぜならば「ニコチン受容体」が身体に備わっていないからだ。
喫煙者は、ニコチンが体内に入り、ニコチン受容体がそれを受け止めてドーパミンを出す事で初めて、安心感や快楽のような感覚を享受している。
人間は最初からニコチン受容体を持ち合わせていない。
まずいけど我慢して吸っているうちに徐々に受容体が出来てくるのだ。
なので、タバコを美味しく吸いたいなら最初はどうしても我慢しなくていけない。
この我慢の部分を大抵の男はタバコに対する「憧れ」や、周りに舐められないようにという「プライド」などが先行してやせ我慢できてしまう。
喫煙率は女性に比べて男性の方が高い。男がタバコに初めて触れるきっかけは得てしてそんなもんだと思う。そのうち喫煙が習慣化してしまい、長年の時をかけてやめたくてもやめられなくなるのだ。
受動喫煙でもニコチン受容体は形成される⁉
最初から美味いと感じてタバコを吸う人はいないと書いたが、中にはいるかもしれない…。
もしいるとしたらそれは、家族やいつも一緒にいる人間が喫煙者ということ。
その人の副流煙を近くで吸い続けることでニコチン受容体が図らずとも形成されてしまったというケースだ。
以前、外国の太った幼児がこなれた姿でタバコをばかばか吸ってる様をテレビで見たことがある。メディアで取り上げられて全世界で見世物にされたあの子供は可哀そうだ。
あの年齢でタバコのうまさなど解ろうはずがない。
その子の背景に何があったのかは知らないが、親の責任は重大である。
進化するタバコの形
タバコの「形」は時代や国によって形を変える。
キセルやパイポ、紙巻、水タバコ、嗅ぎたばこなど。
現代においては「電子タバコ」なる代物もあり、タバコ業界では主流になりつつある。
日本の技術
フィリップモリス社のアイコス、日本たばこのプルームテック、ブリティッシュアメリカンタバコのグロウなどが有名だ。
アイコスのニコチン量は1,32㎎、タールは0。
プルームテックのニコチン量は0.1~0.5㎎でタールは0。
グロウのニコチン量は1.0㎎でタールは19.2㎎。
こう見ると、日本たばこのプルームテックが一番よい。
タールはゼロでニコチン量も一番少ない。
プルームテックは、特性リキッドを加熱して水蒸気を吸っているのだ。アイコスとグロウはタバコのは葉っぱを燃やしてるので焦げ臭さは多少でる。もっとも紙巻タバコの比ではないが。
電子タバコもリスクはある
さて、この電子タバコはなんのリスクもないのかという事だが、少なかろうともニコチンを摂取してる以上、当然リスクはある。
ヘルシンボルグ病院(スウェーデン)の臨床医で、カロリンスカ研究所(同)の研究者であるGustaf Lyytinen氏らが行った二重盲検無作為化クロスオーバー試験の結果によると、ニコチンを含む電子タバコの吸引により、血栓形成リスク、血圧や心拍上昇作用が認められている。
ニコチンはアドレナリンなどのホルモン分泌を刺激するのでそれにより血栓形成リスクが高まっている。
また、末梢血管が収縮することで血の巡りが悪くなって心拍、血圧が上がる。
これが長く続くと心筋梗塞や動脈硬化、脳卒中など循環器系疾患のリスクがある。
紙巻タバコよりも安全とか作用は大したことないとか思ってはいけない。
そんなことはない。電子タバコの吸引は「無害」とは程遠いのだ。
(HealthDay News 2021年9月7日)
▼外部リンク
・Electronic cigarettes containing nicotine increase thrombotic activity and impair microcirculation.
ストレス軽減にはならない
さらに、喫煙することでストレス解消になると思っている方もいるだろうが、ならない。
むしろ逆で、ストレスをより強く感じていることが解っている。
イギリス保健省の提供の愛煙家500人を対象にした調査で、喫煙はストレス解消になると答えた人は5人に1人。
6カ月、禁煙に向けた特別なプログラムを受けてもらうが、禁煙を続けられた人は491人中68人。
この人たちは以前よりも不安や心配が9ポイントへったと答えている。
反対に、禁煙できなかった人では3ポイント不安や心配が増えている。
そして、禁煙できなかった人の多くがなぜ喫煙するのかという問いに対して不安が軽減されるからと答えているのだ。
不安や心配を数値に表して可視化することで自己矛盾に気付き、喫煙習慣の脱却に繋がるといいのにと思う。
▼外部リンク
The Time of India ; Myth busted: Smoking can’t relieve stress
http://articles.timesofindia.indiatimes.com/2013-01-03/
British Journal of Psychiatry
http://bjp.rcpsych.org/content/202/1/62.abstract?
喫煙者は風邪引くと悪化しやすい
電子タバコ利用者はコロナウイルス罹患時の自覚症状が重く、味覚、嗅覚障害、胸痛も非利用者よりも多い傾向にある。
米メイヨークリニックの研究で、非喫煙者と喫煙者を5対1の割合で抽出した自覚症状の有訴者率を比較したものだ。
胸痛は非喫煙者10%、喫煙者16% 悪寒は19%、25% 筋肉痛32%、39% 頭痛41%、49% 味覚嗅覚障害30%、37% 悪心嘔吐腹痛10%、16% 下痢10%、16% 立ち眩み9%、16%という具合に、すべてにおいて喫煙者の方が自覚症状の率が高い。
(HealthDay News 2022年1月18日)
▼外部リンク
・Symptoms COVID 19 Positive Vapers Compared to COVID 19 Positive Non-vapers
タバコとコーヒー
煙草に関してはこんな研究もある。
それは、喫煙者が朝にタバコを吸いながらなぜ一緒にコーヒーを飲むのかというものだ。
喫煙者は起床時、ニコチンの離脱状態になっている。
これすなわち「あぁ、タバコ吸いてぇ」というような状態。
この時に、コーヒーも一緒に飲みたくなるときがある。
それは、コーヒーに含まれるカフェインを摂取することで眠気を覚ますとか、冷たいコーヒーを飲んでシャキッとするとか、缶コーヒーに含まれる糖質をとる事で血糖値を上げてエネルギーの生成を促すなど考えられるが、どうやらそうではないらしい。
米フロリダ大学医学部薬理学分野教授のRoger Papke氏らの研究によると、焙煎したコーヒー豆に含まれる2種類の化合物が脳内の特定のニコチン受容体に直接影響を及ぼして、ニコチンに対する渇望を緩和している可能性が示唆されたのだ。
この化合物はカフェインと関係はないのだ。
▼外部リンク
・Coffee and cigarettes: Modulation of high and low sensitivity α4β2 nicotinic acetylcholine receptors by n-MP, a biomarker of coffee consumption
決して裏切らない相棒
タバコの害を謳った論文や読み物は多々ある。
これもそのうちのひとつになるであろう。
タバコは「百害あって一利なし」と、どの読み物でも書かれている。
だが、タバコを通じ、喫煙所で知らない人と仲良くなったり、苦手な人と話せるようになったり、絆が深まったりと喫煙者にしか分からないいい事もある。
その他にも、友との再会を祝しての一服、帰省した際に故郷の風を感じながらの一服、今日を何事もなく終えたという「無事」を噛みしめる帰宅後の一服など、喫煙者にしかわからないビジョンと格別のシチュエーションというものがある。
タバコを通じての良い思い出や、辛い時をタバコと共に乗り切った苦い思い出など人それぞれドラマがある。
いくら害悪になる根拠を並びたてられても、やっぱりやめられない人はやめられないのだ。
喫煙者にとってタバコは、いつもそばにいてくれる決して裏切らない「相棒」のような存在だから手放せない。
無理して禁煙する必要はないと思う
ちなみに、こんなの書いてて筆者は喫煙者なのだろうと思うかもしれないが…僕は数年前に完全にやめた(笑)幸か不幸か、タバコを吸うと具合が悪くなるように体質が変わったのだ。
どうしてもタバコが止められないという方は、健康被害がでていなくて人に迷惑をかけてないならば無理して止めずに「愛煙家」としての道を歩むのも一つだと思う。日本スモーカークラブというのもあるからコンタクトを取ってみるとよい。その他、国内のキセル、世界のパイポ収集などを趣味にしてもよいかもしれない。
慢性急性のお身体の症状には、鍼や刺絡が効果的な場合もあります。