免疫力を上げるには。

副交感神経が優位になるとリンパ球が増える。それすなわち免疫力が上がるということだ。なので、免疫力を上げるにはリラックスの神経である副交感神経を優位にすることが肝要となる。

よく、忙しいのが続いてる時、つまり緊張を司る交感神経優位の方が風邪をひかないと言う人がいる。交感神経が優位になるとリンパ球が減って顆粒球が増える。顆粒球は、寄生虫、ウイルス、細菌、病原体などを貪食してくれる大切な免疫成分であることに変わりはない。しかし、この顆粒球は寿命を迎えて死ぬと活性酸素という毒になる。それは胃腸粘膜を傷つける性質があったり、老化を促進させる物資でもある。

交感神経が持続的に優位になり活性酸素が溜るイメージケースとして例を挙げる。①昼のあいだ学校で学び、夕方からバイトをして、夜から友達と朝まで遊び、そのままパチンコ屋に並んでパチスロを打ち、昼過ぎに帰宅してカップラーメンを食べてタバコを吸う。パチンコの損益と疲労を抱えたままふて寝して疲労が満足に取れない内にバイトへ行く。いわゆる最悪な状態。

②正月に皆で集まって夕方から飲み始め翌日の朝まで飲み、その後温泉に行き、ブランチを食べ、初詣に行き、午後3時帰宅。酒と疲労が残り、胃液が上がってくる、声がかすれ、頭が回らない。しかも翌日から仕事。絶対このあと体調を崩すに決まっている。むしろ崩したことがある。そんな経験はないだろうか?

最後に、子供が発症するいわゆる「知恵熱」③小学生の低学年時。冬休みにおばあちゃんの家に行くのが楽しみ過ぎて一週間前から指折り数え、ドキドキしてなかなか眠れない。ようやく明日出発だと思ったら、翌朝風邪を引いて熱を出して行けなくなる…。子供の長期休暇あるあるだ。これは「知恵熱」であり、楽しみ過ぎて脳のワーキングメモリを超えて脳がヒートアップしてショートしたと思っている方もいるかもしれないがそんなことはありえない。交感神経優位の状態が長く続いてリンパ球の値が下がって風邪を引いた典型的な現象だ。

自律神経は副交感神経と交感神経のメリハリが大切だ。忙しい時の方が風邪を引かないという人は、恐らく自己マネジメントがしっかり出来ている優秀な人だ。忙しくても、緩めるところと締めるところ、休息のスケジュールをたとえそれがタイトであっても管理出来てるのだろう。

免疫を高めるには、体温も重要だ。

身体には免疫細胞とそれを司るシステムがある。意外に感じるかもしれないが、体全体の約70%の免疫は胃腸にいる。勿論、血液とリンパ液の中にいて全身をくまなくパトロールしている免疫もいるが、多くの免疫は胃腸付近を重点的に固めているのだ。それはなぜかというと、胃腸が人体の中で一番外界の異物と接するところだからだ。人間は呼吸と飲食により実に様々な異物を体内に入れている。中には毒もあろう。それを一つ一つ分解して無毒化するために胃腸を守っているのだ。さてこの免疫細胞達、これらが一番よく働いてくれる体の最適温度は37度台だ。逆に冷えていると免疫細胞が上手く働かず、本来追い払えるはずのウイルスに負けて風邪を引いてしまったりする。風邪を引いて熱がある時に、下手に解熱剤を飲まない方がよいと聞いた事はないだろうか?それはこの理屈に起因する。長引く高熱は問題だが、風邪を引いた際にある程度の発熱はあってしかるべきだ。最適な温度の環境下で免疫達にウイルスを駆逐してもらわねばならない。なので日頃から、運動して体温を高める、お腹を温める、あまり冷たい物は摂らないようにするに越したことはない。

体温を上げて筋肉を付けて代謝をあげるには適度な「運動」は良い。億劫でもちゃんとやった方が良い。それに、肥満でいると男性は中性化が進む。テストステロンという男性ホルモンが肥満細胞とくっ付くことでエストロゲンという女性ホルモンに変化する。これが男性版更年期障害の一要因ともなる。さらに脂肪細胞の中にあるACE2受容体にコロナウイルスの棘が引っかかりやすいのでコロナにも罹患しやすくなる。

以上のことからも運動筋トレは非常に大切だ。だが、疲れている時は日々のトレーニングルーティンの達成よりも休息を優先せねばならない。なぜならば、疲労よりも毎日やると決めたルーティンを辛くても達成したという満足感の方が上回ってしまうからだ。達成感は感じるが身体には確実に疲労が蓄積する。これを続けるとそのうち、ひょんなことから生活リズムが乱れた時に一気に体調を崩す恐れがある。ルーティンの達成よりも休息を優先させる英断も時として必要となる事を覚えておいて欲しい。

その他、免疫力を高めて病原体を寄せ付けない方法としては、うがいも重要だ。咽頭粘膜にウイルスが引っ付いたとしてそれが血管内に侵入し始める時間は約20分と言われる。伊勢丹などのデパ地下、中野ブロードウエイのような人混みの中での感染がどうしても気になるならお茶か水でうがいをした方がよい。なにもお手洗いに行かずとも、その場で口に水分を含みマスクをして上を向いてうがいをし、そのまま飲み込めばよい。飲みこんだ病原体は胃酸で死ぬか上述したお腹の免疫細胞が殺してくれるだろうから問題ない。仮に、病原体が粘膜から血管内に侵入しても血液中を回っている免疫細胞が対応するという二段構えになっている。

世の中にはコロナウイルス以外にも様々なウイルスや病原体がいる。それらに打ち勝つ自己防衛力を日々高めなくてはならない。家に引きこもって動かないでいるような守りの防御も良いが、力を付けて外に出ていくという「攻め」の防御を身に付けることも大切なのだ。