「過緊張性発声障害」刺絡と感情のセルフモニタリング。

発声障害とは、声のかすれやなんらかの発声困難な状態をいう。これは大きく分けて2つに分類することができる。1つは器質性発声障害。これは声帯ポリープや咽頭炎などにより発声のコンディションが悪くなることだ。2つめは機能性発声障害。これは、喉や声帯など発声に関わる全ての部位に異常がないにも関わらず何らかの発声困難な状態になってしまうことだ。

機能性発声障害は、過緊張性、低緊張性、痙攣性、心因性、音声振戦、変声障害などいくつか種類があるがこの中では過緊張性の発声障害が一番多い。

過緊張性発声障害は主に10~20代の比較的若い方がなりやすい。

原因としては、日々の発声の習慣や発声の仕方に問題があるということと、情緒的要因が重なっていると考えられている。過緊張性発声障害の方の6割以上が、症状発症前後でストレスを伴うライフイベントがあると自覚している。

言葉を発っするということで考えると言語の中枢は前頭葉にあるブローカ野と側頭葉にあるウェルニッケ野だ。ここから発話指令が呼吸中枢、喉頭運動ニューロンに伝わり、そこから声帯に指令が行くことで声帯が閉じて声帯ひだが振動して発話がなされる。過緊張性発声障害の場合は、呼吸中枢ー喉頭運動ニューロンから声帯への内転指令が強く出されていることが考えられている。その結果声帯が強く閉じてしまって発声しにくくなる。これをずっと続けていると声のかすれや発声困難につながるのではないかと考えられる。

当院では過緊張性発声障害の場合、井穴刺絡を行うことが多い。この施術法は簡単にいうと体表内臓反射を用いて、直接刺激出来ない内部に影響を与えると共に、自律神経に働きかける事ができる。「過緊張」という言葉が付いているくらいなので、自律神経に働きかけてリラックスの方向へ導いたり、バランスをとる事は重要だ。早い時は、声を出してもらいながら刺絡をしている間に声の通りがよくなることもある。刺絡は割と即効性があるが、なかなか効果が出ない場合は内因的なストレスや心の状態などが関係している可能性は大きいと思う。

上記でこの症状は10~20代に多いと書いたが、その理由としては「人生における経験不足」が大きいだろう。30、40、50歳と年齢を重ねるうちに「あの時は大変だったけど今思えば大したことではない」とか、「こんなこともあったな」というように色々な経験をして傾向と対策を学んだり色々な角度から物事を判断できるようになる。なので、年配になればなるほど嫌な事から上手に逃げたり、無視したり、大きく構える事ができるし、色々な選択肢を持っている。

ところが若いと色々な事が初めての事であり、情報不足であり、そしてその小さな心と頭の中の世界ではそれが「全て」なのである。だから、混乱もするし、人によっては度が過ぎた我慢もするし、思いっきり遠回りもするし、負わなくてもいい傷を負う。その結果、身体に何かしらの症状が出てくる。

「そんなメンタルではこの社会では通用しないぞ」とか「根性と忍耐で、例えるなら石に苔が生えるまで我慢するのだ」(笑)みたいな。それは言い過ぎかもしれないけどだいたいこんなような言葉は誰もがどこかで一度は聞くだろう。大丈夫な人は大丈夫なんだろうけれど、大丈夫でない方は大抵そのうちメンタルをやられてしまう。

僕が思うに、辛いけど辛くないふりをしたり、悲しいけど悲しくないふりをしたり、怒ってるけどその感情を押し殺したりと、生まれた感情を無視し続けていると無視した感情は身体の内側から自己主張を始めると思う。例えばそれが胃腸症状として出てきたり、お肌の吹き出物や、声、耳なりとか、免疫系等の異常、血圧などの循環器症状など。原因不明の様々な症状の背景には「押し殺して無視した感情の自己主張」が関与している可能性は高いのではないかと僕は思う。要は何らかの感情が症状発症のトリガーとなっている可能性があるという考えだ。東洋医学においても五臓六腑と感情との相関性が記されている。

そこで、「感情のセルフモニタリング」をおすすめする。例えば、症状が出た時、○○月○○日○○曜日感情が揺さぶられるようなとても嫌な事「A」があった。その時に「怒り」「悲しみ」「恐怖」の感情が生まれた。

次にまた症状が出た時、○○月○○日○○曜日 嫌な事「B」があった。「怒り」「恐怖」の感情が生まれた。

そのまた次、○○月○○日○○曜日 驚くような事「C」があった。「怒り」「憂い」の感情が生まれた。

症状が出たこの3つのケースで共通する感情は「怒り」だ。なので症状発症のトリガーとなっている感情は「怒り」の可能性がある。なので、この感情を自覚してなんとか諫める方法を探るのだ。例えばアンガーマネジメントを学ぶ、サンドバッグやミット打ちに行くとか。

今、自分が置かれている状況は簡単には変わらないだろうが、自分自身のウィークポイントが解っていれば傾向と対策を練ることが出来る。準備出来るし、アフターフォローも出来る。それだけでもかなり大きいと思う。もしも何か悩み事があって一人ではどうしようも出来ない時は相談して欲しい。

https://youtu.be/1FjN6r84sn4