「サピエンス全史」から見る、現代のインフルエンサーについて。

「サピエンス」とは「賢い」という意味であり、ホモ・サピエンスは直訳すると「賢いヒト族」という意味になる。その「賢さ」とはなんなのか…。

ユダヤ人の歴史学者、ユバルノア・ハラリ著者「サピエンス全史」という本は数年前に話題になった。この本には、考えさせられる考察や歴史的解釈、新たな発見や事実が書かれていてそれが多くの読み手の心を引き付けるのだろう。その中で個人的に青天の霹靂だったのは、ホモ・サピエンスとネアンデルタール人は別物だったという事だ。原人からネアンデルタール人になり、それが進化して今の我々、ホモ・サピエンスになったとばかり僕は思っていた。

そうではなく、ネアンデルタール地方に住むヒト科のヒト族がネアンデルターレンシスと呼ばれる、いわゆるネアンデルタール人だという事を初めて知った。さらに他にも、ホモ・エレクトス、ホモ・ハビリス、ホモ・ルドルフエンシスなど、ヒト科のヒト族はホモ・サピエンス以外に数種類いたということも併せて初めて知るに至った。※もっともこれらはこの書籍が出る以前から知られている既成事実でもある。それに関しては単に僕が無学なだけだ(笑)

では、なぜ現代において他のヒト族がいなくて我々ホモ・サピエンスだけになったのか?

それは、ホモ・サピエンスが自分たち以外のヒト族をすべて根絶やしにしたからだそうだ。無論、様々な要因で自然に淘汰された種族もいるだろう。でも、「残った」側と「残れなかった」側には明確な差がある。その大きな要因は「団結力」だ。

作者であるハラリさん曰く、ある日突然「認知革命」なるものが起きて、ホモ・サピエンスだけがなぜか「嘘」をつけるようになったのだそうだ。そしてその嘘をホモ・サピエンスだけが信じたのだそうだ。

他のヒト科のヒト族は、自分の目で見た事物しか信じなかった。ホモ・サピエンスはその他のヒト族に比べると骨格が小さく非力であったため、一対一の単純な戦闘では負けてしまう。しかし、ホモ・サピエンスは嘘を駆使して団結し、数に物を言わせてその他のヒト族を駆逐していったそうだ…。

もしかすると当時は…、

ホモ・サピエンスA「〇〇さんが言ってたけどあいつら(他の人族)マジでやばいらしいよ。うらちのこと嫌ってるらしい。」

ホモ・サピエンスB「それ私も、〇〇さんが言ってたの聞いたよ」

ホモ・サピエンスA「〇〇さんって超すごい人らしいから絶対ほんとだよ」

ホモ・サピエンスB「そうだよね、〇〇さんまじで神だよね!」

ホモ・サピエンスA「〇〇さんに認められたいなぁ、だからいつでも攻めれるように人数集めておこう!」

…みたいな感じだったかもしれない…。

良くも悪くも団結力は大切だ。「数は力」という言葉の通り、数に勝るものはない場合も大いにある。

団結するには先導役が必要だ。この先導する立場の人間は「先見の明」を持たねばならない。これからの未来に起こる脅威をなるべく正確に予測することができる人間に人々は従う。

そしてもう一つ、人が抱えている悩みを解決してくれる「ツールやノウハウ」を持っている人間にも人は従う。

これらは現代にも通じるものが多くあり、ビジネスマネージャー、政治家、あらゆる「師」もしくは「士」業、一部のSNSインフルエンサーなどがこれに当たるのではないかと僕は思う。別に全てのリーダー達が嘘をつき、大衆を先導していると言っているわけではない。立派な先導者、すばらしいリーダー達は世界中にたくさんいる。だが、現代における様々な詐欺や犯罪、マルチ商法、胡散臭い情報商材屋、「悪いことをする偉い人たち」などは、「嘘」の力を使い利己に走っている。

嘘の力を使って利益を得ている人間たちは紛れもなく悪であるが、虚構の世界を構築するにあたり、そこに関わる様々な事物に関してはめちゃくちゃ勉強して知識をつけている事は確かだ。

逆に、嘘をつかれて騙されてしまう人は情報不足とも言える。確かに瞬間的な判断が求められるような状況では、真偽を確認する材料が少なく、シチュエーションによっては逃れることもできず、相手の術中にはまってしまう場合もあるだろう。

嘘をついて利益を得ようとする人間は、ちょっと調べればすぐにばれるような嘘をついている場合もある。そこをめんどくさがらずにその業界のことを調べて理解し、同種同業を比較検討してみるとよい。そうすると矛盾点やおかしな点、穴が見つかる可能性が高い。

例えばBodyメンテナンスの業界なんかでは、「数十万人の施術実績」、「世界の王族の施術をしている」、「日本一予約が取りにくい」、「芸能人が多数来院している」、「〇〇を治せる唯一の施術」、「多くの医師が称賛する施術」などのような胡散臭いふれこみを目にすることがある。これらは大体がハリボテで、情報弱者を呼び込むための悪知恵なのである。なぜほとんどがハリボテ、嘘と決めつけるのか?逆に言うとそれは証明しようがないからである。写真等はいくらでもごまかせるし、中には本当の本物もいるだろうが、そもそもそういう人間は宣伝などしないし、する必要もなくあまり表には出てこない。

人は…いや我々、ホモ・サピエンスは誰でも、つこうと思えば嘘をつくことができる。そして「嘘をつく側」と「嘘をつかれる側」の2種類がいることもまた事実だ。

嘘をつく側は賢く、嘘をつかれる側は賢くないのか?「賢い人族」であるホモサピエンスとは、「うまく嘘をつく人族」と言う意味なのか?そうではない。特殊技能や経験則を元に、利己ではなく、利他の心を持ち、我々ホモサピエンスだけではなく、ひいては自然環境の事までも視野に入れつつ、あらゆる問題解決に臨み、危機を回避する、というのが真の「賢さ」であり、ホモサピエンスとしての役目ではないだろうか。

東洋医学の考え方で、鍼灸師には3つのグレードがあるという。まずは下医。下医は患者の身体だけを治す。次に中医。中医は患者の体と心を治す。最後は上医。上医は1度に多くの患者を治す。

上医のそれは例えるなら、重大な感染症を未然に防ぐとか、大勢の人を救える薬を作るとか、言葉と存在で多くの人を癒し勇気づけるなどがそれに当たる。

僕自身、鍼灸師として上医とは程遠い存在ではあるが、正しい心を持ち、日々精進し、生涯をかけて「上医」を目指してみたいものである。