刺絡と瘀血の量と「笑い」の関係性。

10年以上、臨床で刺絡を行ってきて気づいたことがある。それは施術中に患者様がたくさん笑えば笑うほど瘀血の排出量が多い傾向にあると言うことだ。

必ずしも全員がそうと言うわけではないが、そのような傾向にある事は間違いないだろう。

と言うのも、笑えば笑うほど交感神経と副交感神経のスイッチングが行われてリラックス状態を創りやすく、体温の上昇及び血管の拡張を程よく促す事ができるからだ。

なので、ゆっくり休みたいという方や、深刻な事情を抱えてとても笑う気分ではないという方、静かに施術を受けたいという方でなければ施術中にたくさん笑っていただけるようになるべく努力している。

瘀血の量と症状改善は必ずしも一致しない。多ければ多い程良く効く訳ではないし、逆に出血量が少ないから効果がないわけでもない。この事は刺絡のあらゆる指南書にも明記されているし、これまでの経験からして僕も同意見だ。

しかし、実際の臨床において刺絡を受ける患者様は瘀血が多く出ると喜ぶ方が多い。そして、満足度と症状改善効果を強く感じている方が多いように思われる。

だが、これは半分はプラシーボ効果のようなものだと思う。「半分」としたのは、瘀血が要因で内因性発痛物質が滞りいわゆる不通促痛が症状の原因となっている場合、局所の瘀血をその周囲の経穴に刺激をして排出する事で症状が緩和する事は確かにあるからだ。

だがしかし、患者様の満足度を上げるために出血量を増やすと言うのは間違っている。ただ、自然な形で効率よく瘀血の排出を促すと言うのであれば、刺絡を受ける前段階から楽しい気持ち、幸せな気持ちでいた方が上述したように副交感神経が優位になりやすく、毛細血管の開きも良くなり、結果として瘀血の排出をよりスムーズに促すことができるだろう。

夜の時間やお昼など、ご飯前の空腹状態の時のように血糖値が下がっていたり、極度の疲労や、電解質のバランスが崩れている状態で頻繁に大笑いをすると高血圧になりそこから逆に頸動脈洞の反射で貧血を呈する可能性もあるので注意が必要ではある。

なので、バイタルが安定している状態で適度にリラックスして、笑いをなるべく多く取り入れる習慣を普段から身につけておくとよいだろう。「笑い」は、刺絡の施術の際に瘀血の排出を促しやすくするだけでなく、白血球中の癌細胞を殺すNK細胞を増やす事も知られている。それ以外にも「笑い」の習慣を付ける事で人生が豊かなものになるだろう。

脳は、本気の笑いも作り笑いも同じ「笑い」と捉える。そして、笑っている人を見ると脳内のミラーニューロンが働き、自然と自分も笑顔になる。表面上はお互い笑顔で、肚の内ではエグい事をお互い考えているというような世界もあるだろうが、基本的にお互い笑顔でいれば争いも起きにくく、ストレスもあまりたまらないのではないだろうか。

悪い血が溜まっている気がするとか、デトックスしたいとか、全身の重さを取りたいなどという時は刺絡も一つの選択肢ではあるが、まずは「笑い」を心に宿し、内から身体を浄化してみる事をお勧めする。