慢性前立腺炎と鍼灸治療。

前立腺とは前立腺液といわれる精液の一部を作り精子に栄養を与えたり、精子を保護する役割がある。

この部分に炎症が起きる事を前立腺炎という。細菌感染による急性の前立腺炎ではなく、慢性の前立腺炎の原因は多岐に渡る。例えば、検査では検出されない病原微生物の存在の影響、肝臓などの前立腺以外の臓器の問題、自己免疫疾患、内分泌異常、精神的な要因など。その他に小骨盤内の循環が良好でない事が大きく関与しているのではないかという考え方もある。血流促進を旨とするならば、鍼灸治療も入り込む余地があるのではないかと私自身も考える。

ここに、慢性前立腺炎に対する鍼通電療法で功を成したという文献があるのでそれを紹介する。

慢性前立腺炎の治療法としては、抗生物質をはじめとする薬物療法や前立腺のマッサージなどの物理療法が取られる。結論から言うと、それらの療法よりも鍼通電の施術の方が治療効果が上がったという結果が出ている。

上記のように、薬物療法と鍼以外の物理療法を行っていたが、あまり効果が出ていない100症例に対して小骨盤内の循環の悪さが慢性前立腺炎の成因の一つと考え、その周囲の循環改善を目的として鍼通電療法(EAT)を行った。

場所は、腹部と腰部である。※ツボの名前は下に元の資料のURLを添付するのでオリジナルを参照してください。

そこに対して10~15分程の鍼通電を行う。評価方法としては尿中の白血球数、前立腺の圧痛、自覚症状だ。

結果としては、それぞれにおいて改善が見られた。中でも薬物併用群と非併用群の比較の結果が興味深い。有効率で見ると両者に相違はないのだが、著効率をみると非併用群の方が併用群よりも倍近くの著効率を示したのだ。

服用していた薬剤は抗生剤、抗菌剤、漢方、消炎鎮痛剤など。薬は時として必要なものであるが、服用により鍼灸施術や自己治癒力を鈍らせている可能性もあるのかもしれない。全部が全部とは言わないが…。

「慢性前立腺炎の合併症の内、便秘か下痢のある症例もある。これは前立腺周囲の器官の器質的な病変と慢性前立腺炎との関係が密接であるだけではなく、前立腺周囲の大腸、その他の器官の機能的病変とも本症の因果関係が大きい事を示唆するものである。また、便秘や下痢の原因は自律神経機能の異常が考えられ自律神経機能状態のアンバランスが本症に対して少なからず影響を与えていることも予測される」と文献には書かれている。

病院に通っていてもなかなか改善しない、これと言って原因が良く分からないような慢性前立腺炎の場合、前立腺の炎症だけを考えず、周囲の臓器にかかる負担や臓器の位置、日ごろの姿勢や生活習慣、自律神経やストレスなど全体を総括的に診ていく必要がある。慢性前立腺炎だけに限らず、慢性症状に対して薬物療法やその他の物理療法があまり効果的でない場合は、鍼灸治療というのも一つの選択肢になるという可能性を感じた文献だった。

慢性前立腺炎に対する鍼通電療法 (jst.go.jp)

から抜粋。

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