「一般臨床医学」急性膵炎について。

急性膵炎の患者さんは日本人で年間6万3千人もいます。50~60代の男性に多く、原因の3分の一はアルコールです。

膵臓はへその少し上、胃の裏側に隠れるようにあります。歯磨き粉のチューブくらいの薄くて小さい臓器です。肝臓の10分の一くらいです。

膵臓の働きは、血糖値を下げたり、食べ物を消化する3つの酵素をだします。

トリプシンはタンパク質を、リパーゼは脂質を、アミラーゼは炭水化物を分解します。

胃で粥上になった食べ物は十二指腸にいきます。すると胃や十二指腸から膵臓に膵液を出すように指令がいきます。そこで膵管から膵液が出てきて十二指腸に分泌されます。

膵臓からでるトリプシンは普段活動していません。十二指腸に分泌されると活性化します。しかし、急性膵炎の場合はトリプシンが勝手に活性化してしまって膵臓を溶かしてしまうのです。いわゆる自己消化が起きます。

それにより起きる急性膵炎の症状は、突然膵臓に炎症が起きるのでいきなり激しい腹痛が起きます。みぞおちからへそ、背中の痛みもあります。痛みは短時間では治らず持続します。吐き気、発熱、嘔吐などの症状も出ます。この場合、胃の症状と違って、吐いても治まりません。

急性膵炎の原因

男性 アルコール46% 胆石20% 特発性13% その他21%

女性 アルコール10% 胆石40% 特発性23% その他27%

アルコールにかんしては、飲んだお酒が肝臓で代謝された際にその代謝産物の中に膵臓をするものがあり、それが膵臓を刺激してトリプシンが活性化して自己消化してしまうのです。

お酒の量と急性膵炎のリスク

酒20g以上飲む人は飲まない人の1.7倍

酒40g以上飲む人は飲まない人の3.1倍

酒60g以上飲む人は飲まない人の4.2倍

酒80g以上飲む人は飲まない人の5.3倍

急性膵炎になりやすいのです。※アルコール20gはビール中瓶1本(500ミリグラム)日本酒1合(180ミリグラム)

膵臓の出口である膵管がむくんでふさがってしまい、膵液が逆流して自己消化してしまうケースもあります。

胆石とは、胆のうに出来る石です。主な原因は脂質、カロリーの取りすぎによりおこります。胆のうに収まってくれている分にはいいのですが、胆管の方に転がってくると痛むし、胆管と膵管の合流部あると膵管がつまってしまって膵液が逆流して自己消化を起こしてしまうのです。

治療法と予防

急性膵炎と診断されたらすぐに入院と治療です。まずは炎症を抑えて膵臓を安静にさせます。これ以上重症化させないように努めるのです。

80%は軽症で1~2週間程度で完治します。

ところがあとの20%は重症になる場合もあり、その際は1ヶ月~数カ月の治療が必要です。

重症になると膵臓が大きく浮腫みます。自己消化して溶けてしまうけど大きく見えるのです。しかしとけてもなくなるわけではないのです。やけどして浮腫むという感じです。ゆくゆくこのような炎症が全身に回る事で、呼吸不全、腎不全、心不全を起こす場合もあります。

治療法は、まず絶食です。食事による膵液の分泌を抑えるのです。そして十分な点滴をします。水も飲むことが出来ませんので水分をしっかり補充します。それと炎症により血液中の水分が血管から染み出ますのでそのためにもより水分が重要になるのです。あとは、腹痛が起きますので鎮痛薬も処方されます。

重症の場合はさらに抗菌薬の投与、腸管への栄養補給、超音波内視鏡(ドレナージ)を行います。このドレナージは、すい臓内の液体貯留を胃に流し出すのです。また、壊死した部分を取り除く事もあります。胃カメラの先端に超音波が付いていてそれで見ながら、胃に穴を空けていくわけです。そして膵臓に溜った膿を胃に流し出すのです。穴を空けてしまって大丈夫なのかと思いますが、重症になってくると胃と膵臓がガチガチにくっ付いているので穴を空けてもお腹の中に膿が流れ出る事はないそうです。

急性膵炎の再発率

アルコール性 46%

胆石性 32~61%

重症急性膵炎の20%はくり返すことで慢性膵炎に移行しやすいです。再発を防ぐには禁煙、禁酒、食事療法、暴飲暴食や脂肪の多い物を避ける必要があります。