「整形外科学」変形性膝関節症について。

変形性膝関節症の患者さんは全国で2500万人以上います。

50歳の内二人に一人は変形性膝関節症です。変形性膝関節症は内側の軟骨や半月板が痛みそれにより滑膜で炎症が起きて痛みが出てくるのです。

変形性膝関節症の症状として初期は、

立ち上がる時の違和感、歩き始めに痛む、階段の上り下りで痛む、少し歩くと症状がなくなるなど。

中等度になってくると、

歩行中に痛むようになる、膝が完全に伸ばせない、正座ができない、関節が腫れる、水が溜る、熱を持つなど。

さらに進行すると、

関節の不安定性、強い痛みが出る、片足立ちできない、階段の昇降が困難、O脚がひどくなるなど。

なぜ関節の形が変形するかというと、内側の軟骨がすり減って骨同士がぶつかる事で骨棘が形成されて骨の形が変わるのです。

人間は平たんな道を歩く事で膝に体重の2.6倍の負荷が掛ります。階段を下る時は体重の3.5倍もの負荷がかかります。よって肥満の方は変形性膝関節症になりやすいです。

関節の内部には脂肪組織があるのですが、この脂肪組織からアディポカインという因子が出てきます。この物質は慢性の炎症を起こしたり、関節の変形を進ませる要因になっていると考えられています。

男性よりも女性の方が変形性膝関節症になりやすい傾向にあります。

ある調査によると、男性と比べて50歳以上の女性の場合は膝蓋骨側で3倍、脛骨側で約4倍の速さで軟骨がすり減っているそうです。

女性は男性に比べて筋肉量が少なく、さらに閉経によりホルモンが減少することで筋肉がより落ちやすくなります。そうすると軟骨への衝撃が増えるので関節が痛みやすいのです。

変形性膝関節症の場合、関節液の検査をすることもあります。

これに関しては関節リュウマチや感染症、その他外傷と鑑別するために行うケースもあります。変形性膝関節症とリウマチの違いのいくつかとして、リウマチは動かさなくても痛い、全身がだるい、微熱、貧血などの症状が起きます。

さて、膝を動かすと際にぽきぽきと音がなるとおっしゃる方が結構います。この音に関してなぜなるのかは実はよくわかっていません。ただ、ひとつの要因として軟骨の一部が剥がれた際に骨と骨の間に挟み込まれてそれによってコキコキ音がするのではないかという可能性があります。

このような場合、引っかかり感や痛み、曲げ伸ばしが困難というような症状がなければ軟骨のかけらが多少はさまった程度ではとくに問題はありません。一応、このような症状が出てきになるようなら整形外科を受診した方が良いでしょう。

もしひどい場合は、関節鏡を用いて原因となる軟骨部分を除去するという手術療法もあります。

音がなるいうことに関してもう一つ、キャビテーション理論というのがあります。これは、立ったり、膝を使ったりしたさいに急激に膝の関節にストレスがかかると関節内の圧力が変化して気泡が生じます。そこで圧力を通常に戻そうという働きが起こったときにポキッと音がなるという説です。

音の他に、たまに関節の水を抜くとそれが癖になるという人がいますがそれは全く関係ありません。関節内部で軟骨が痛んで軟骨の一部が関節を包んでいる滑膜の内側から滑膜を刺激することで炎症が起きます。それにより血流が多くなったりすることで滑膜が腫れて関節液が出てきてそれが溜ってしまうのです。いわゆる関節炎の状態です。この炎症が治まらない限り水はたまります。炎症が起きて水がたまっている時はアイッシングで冷やすのも一つです。あと、歩くと痛い場合は余計に痛くなるので、運動したほうが良いと思われがちですが歩かない方がいいです。

ひどい変形性膝関節症で、軟骨が完全にすり減り、さらにO脚もひどい場合は手術療法が適応になるケースもあります。

骨を切って間を広げてそこに人工骨を入れてプレートスクリューで固定することで真っすぐにするのです。人工骨はセラミックで出来ていて、なかに空洞がたくさんあります。その空洞に自分の骨の細胞がはい入り込み最終的には自分の骨に置き換わります。骨切り術の場合は膝関節の自然な動きが残るので、治療後は軽いスポーツや重労働も一応可能らしいです。人工骨が自分の骨になるには数カ月かかります。

かなり変形が強い場合は矯正に限界があります。その場合は上記の方法は適しません。そして骨切り術を行っても約十年で全く元の形に戻ってしまう場合もあります。その場合は人工膝関節全置換術というのもあります。手術時間は約2時間で手術のよくじつから歩く練習が出来て3週間後には退院も出来るらしいです。

ひとによっては骨切り術で非常にその後調子がいい方もいればそうでもない方もいます。人工膝関節は15年使用で95%が問題なしで、20~30年使用できることもあるそうです。手術後の注意点としてはウォーキングや外出など活動的な生活をして良い状態をなるべく保つこと。ただし、ジョギングやテニスなど膝関節を横にスライドさせるような負荷がかかる動きは避けなくてはいけません。水泳や自転車、ウォーキングは良いでしょう。

手術から半年は感染症に注意して、痛みや腫れ、発熱などがもしも出てきたらすぐに主治医の先生に相談することです。

骨切り術の適応年齢は40~60歳で、入院期間は4~6週です。手術後はジョギング、肉体労働などはできます。変形、痛みの再発はある可能性があります。脚の形はすこしX脚気味になります。

人工膝関節全置換術の適応年齢は60歳以上で、入院期間は約3週間です。手術後はウォーキング、ゴルフは出来ますがジョギングや肉体労働はなどはできません。変形、痛みの再発はほぼないそうです。脚の形は真っすぐになります。

膝の痛みや変形が気になる方は一度整形外科を受診されることをお勧めします。

ひどい時は注射や薬、それと合わせてマッサージや運動など適切な施術を受ける事で症状とうまくつきあいつつ、極力痛みを押えながら生活が出来るようになるのではと思います。