「一般臨床医学」子宮内膜症について。

月経は毎月妊娠の準備のために起きるわけです。卵巣で卵が育ちそこからエストロゲンというホルモンが出て、子宮内膜を厚くします。妊娠しなければ子宮内膜が血液と一緒に外に出ていきます。通常、子宮の内側にあるはずの子宮内膜が、生理周期に伴うエストロゲンの関係で他の臓器に飛ぶことがあり、それを子宮内膜症といいます。

卵巣に子宮内膜が出来てしまうとその部分が腫れてしまいます。それをチョコレート嚢胞と言います。時として肺に飛ぶこともあり、それにより肺に穴が開いて気胸になるケースもあるようです。

主な好発部位は子宮と腸の間にあるダグラス窩というところですが、膀胱や膣の内部などにもできたりします。

この子宮内膜が別のところにできてしまう原因としては、子宮内膜が卵管を通って逆流してお腹の中に流れて多臓器に飛んでいるのではないかと考えられています。

子宮内膜症の主な症状は、生理痛、生理以外の下腹部痛、腰痛、排便痛などがあります。生理のある女性の約10%に子宮内膜症があるといわれています。

治療法の一つに、偽閉経療法があります。これは生理を止める治療法です。子宮内膜症は卵巣から分泌されるエストロゲンというホルモンで悪化します。これは脳からエストロゲンを出すように指令がきているわけで、そこのところで脳から卵巣へ送るシグナルを止めてエストロゲンを出さなくするという方法です。この偽閉経療法は注射や点鼻薬などで行いますがそれを止めてしまうと普通に通常通り生理がきます。

他には低用量ピルを飲む場合もあります。低用量ピルを飲むことで妊娠している状態というように脳を錯覚させる方法もあります。妊娠している可能性があると脳が判断するとエストロゲンをだせという命令が卵巣に届かなくなるので子宮内膜の増殖がストップするのです。

妊娠しているような状態にするための薬の一つは低用量ピルで、二つ目は黄体ホルモン製剤です。低用量ピルの副作用としては血栓が起きやすくなるというリスクがあるそうです。その他、吐き気や頭痛があります。黄体ホルモン製剤の副作用は不整出血が見られることがあるそうです。しかし、これらの副作用は3~4か月でなくなることが多いようです。

もう一つ、IUS子宮内黄体ホルモン放出システムというのもあります。これは柔らかいプラスチックでできていて子宮内にIUSを入れておくことで5年間黄体ホルモンを放出してくれるというものです。これにより子宮内膜が薄くなって生理痛が弱くなるのです。

先に述べたチョコレート嚢胞ですが、これは大きくなって破裂するリスクがあります。破裂してしまうと、嚢胞の内部があちこちに飛び散って激しい痛みを起こすのです。チョコレート嚢胞の場合は薬で押さえるというよりも手術で嚢胞を摘出したほうが早い場合もあるそうです。しかし、一度手術で摘出しても再発の可能性はあるので定期的な診察、ホルモン療法が必要です。手術は腹腔鏡で行われることが多いようです。卵巣チョコレート嚢胞は癌化するリスクがあります(1%程度)。40代以降は卵巣がんのリスクが高くなるというデータもあります。閉経後も癌化のリスクはあります。

卵巣チョコレート嚢胞があると不妊の原因になります。これがあると卵の数が減る、卵管が動かなくて卵をうまく吸いあげられない状態がつづいてしまうからです。そして、子宮内膜症の薬は排卵を止めてしまうため薬を飲んでいる間は妊娠することができないのです。

実は不妊症の患者さんの約半数以上に子宮内膜症が見つかっています。妊娠するにはエストロゲンが分泌され排卵が行われて子宮内膜が増殖する必要があります。子宮内膜症による不妊症の場合、妊娠したい時はどうすればいいかなのですが、まずチョコレート嚢胞などの場合は手術をして自然妊娠を目指す、手術しないで体外受精を行う、手術も体外受精もせずに自然妊娠を目指すという形で一番負荷が掛らずにご自身にあったかたちが良いのではないかとおもわれます。