今回は、前屈痛がとてもひどいぎっくり腰の症例です。
重い物を持った際に腰を痛めたという事で、その時はさほど痛いわけではないけれども時間の経過とともにとても痛くなってきたという状態です。それ以外にも、普段からデスクワークなどで負担が腰部周辺にかかりやすい状態ではあるということで、慢性的に腰回りの血流が悪くて痛みが出ている可能性があると考えました。
前屈痛の他にも、回旋、側屈と辛い状態で、回旋時痛は臀部や側腹部の筋肉を緩める事で症状は多少楽になりました。しかし、前屈や側屈時に痛む腰椎と仙骨の間付近の痛みは依然として強いまま。そこで、痛む腰椎周辺部分に無血刺絡を行いました。
僕の経験上、前屈痛は割と取りやすいです。痛む箇所やその周辺の神経走行にそって無血刺絡を行うと非常に効果的です。
ところが、今回は無血刺絡をおこなっても前屈痛は全く楽になりませんでした。刺激により症状が全く変わらない場合は、刺激部位が間違っているか、組織が損傷していて炎症が引くのにある程度日数が必要な場合、非可逆的変性が起こっていて刺激うんぬんの問題ではない場合、などが考えられます。
今回の場合、荷物を持ち上げる際に痛めているというきっかけがあるので患部(腰椎や周辺の筋肉)に炎症が起きている可能性もありますが、刺激部位が間違っている、真の原因部位が捉えられていない可能性もあると判断しました。
そこで、痛む部位はL5、S1付近ですので施術範囲を広げてその二つの神経支配領域に刺激を加えていきました。無血刺絡は、痛んでいる部位や血流が悪い部位、何らかの反応が出ている箇所にあたると他よりも鋭く感じます。
なのでL5、S1の神経支配領域に刺激を加えていき、どこの部位が一番鋭く感じるかを探っていきました。すると、腰部から離れた坐骨結節、殿筋の下部周辺が一番鋭く感じるとの事。なので、その部位の筋硬結部位を手で押さえた状態でもう一度前屈の動きをしてもらうと、かなり楽に動かすことが出来ました。今まで腰部、椎間関節、脊柱の筋、側腹部の筋、お腹側の筋、大腿部、臀部などを刺激しても全く症状が変化しなかったのに、臀部の下部である坐骨結節周辺を刺激することで症状に変化が現れたのです。
そんなに急に変わるものかと思われる方もいるかもしれませんが、明らかな怪我などの外傷ではない何らかの痛みや症状の場合は、適切な箇所の神経血管に刺激を与える事で即座に何らかの変化が出ます。ただ、今回のケースからも分かるように「適切な箇所」に適切な刺激を加えないと症状は変化しません。
神楽坂 東五軒町鍼灸整骨院より。