脳卒中のリハビリ

脳卒中後のリハビリを適切に行う事で失われかけた機能を戻す事が期待できる。

脳卒中とは、脳の血管の異常により起きるトラブルの総称だ。脳梗塞や脳出血も脳卒中の中に入る。脳卒中では手足のまひ、歩行障害、感覚障害、しびれ、痛み、嚥下障害、構音障害、失語症、高次脳機能障害などの症状を呈する。脳のどの部位が障害されているかによって症状が違う。だが共通しているのは、どの部位だろうと発症後48時間以内にリハビリをしなくてはならないという事だ。早い段階からリハビリをすることで回復が見込めし、早期から少しでも身体を動かす事で筋力の低下や床ずれ、廃用症候群を防ぐことにも繋がる。

脳細胞は10分以上酸素と血液が途絶えると壊死し始める。そして一度壊死した細胞は二度と元には戻らない。そのため、死んだ脳細部の働きは脳の代償機能でリカバリーするしかない。代償機能とは、脳のダメージを負った部分を正常な脳の部分が肩代わりをするという機能。

死んだ細胞が担っていた機能を、新たに神経の配線を構築して別ルートで復元しようという脳の働きなのだ。以前のブログでも書いたが、脳には「Loose it Use it」の法則があり、使わないと脳が判断した機能や特殊技能は捨てられる。そのため、機能を維持するには「必要で使っている」と脳にアピールしなくてはならない。それが早期のリハビリだ。さらに、脳は今までの習慣とは違う事、つまり新たに複雑で高度な神経回路の配線を構築するのにとても労力を使う。脳の情報処理などの働きのエネルギー源は糖質だ。それも、全身の15%以上の糖分を使う。糖質は身体にとって生命維持のための貴重なエネルギー源だ。そのため、身体を動かして獲物を捕るために糖を使用するのではなく脳で使用するのを本能的に嫌がる、というかストレスを伴う。複雑高度な神経のラインが構築されるまでは大量の糖質を必要とするためだ。だがそのうち配線が完了してそれが脳のデフォルトモードになれば、少ないエネルギーで複雑高度な機能を使えるようになるからストレスは感じなくなる。なので、リハビリ当初は多大なる負荷とストレスが心身にかかる事が予測されるが、デフォルトモードになればきっと楽にできるようになるはずだと、自分と医療機関を信じて頑張るしかない。

脳卒中のリハビリは、まず起き上る事が出来るかどうかが大切だ。そしてできるようになってきたら段階に応じて適切なリハビリを行う。起き上る→車いすに乗る→立った姿勢を維持→平行棒内で介助ありの歩行訓練→平行棒内で介助なしの歩行訓練→平行棒なしの歩行訓練→杖ありの歩行訓練→杖なしの歩行訓練というような流れとなる。

発症から早くリハビリを開始している人は約70%の確立で回復している。しかし時間が経てばたつほど回復の見込みは悪くなり、6カ月経ってしまうと劇的な回復はほぼ見込めない。なのでリハビリは6カ月間が勝負。

脳卒中発症後2週間~2ヶ月後に「痙縮」が起きる場合がある。痙縮は、麻痺した筋肉が異常に強張ったり勝手に筋肉が動いてしまうというもの。対処としては、ボツリヌスを注射して強い筋緊張を緩める方法がしばしばとられる。

麻痺した筋肉に低周波の電気刺激を与えて筋肉を強制的に動かしたり増強させる電気療法もある。

さらに最近では、腕や下肢に装着して関節の曲げ伸ばしを補助するリハビリロボットなるものもある。「動かそう」と脳で考えただけで筋肉が発する電気信号を感知して、適切な程度で動くという仕組みになっている。

リハビリは6カ月後もなるべく様々な動きの運動は継続したほうが良い。リハビリを止めると真っ先に足腰の筋肉から弱る。

脳卒中後は精神面での変化も起きる。意欲ややる気が低下するアパシーや鬱状態になる人もいる。意欲が無くなる事でリハビリが滞り機能回復に遅れが出ることもある。そのため、精神面でのケアもとても大切だ。

最後に、脳卒中後のリハビリを一生懸命頑張ってもどうしても後遺症が残る事もある。しかし、今の世の中、行政サービスや最新の医療、生活における困難な動作も工夫次第では道が開ける可能性は大いにある。絶対に希望を捨ててはいけない。