「一般臨床医学」慢性膵炎について。

急性膵炎が繰り返すと慢性膵炎になります。小さい炎症が膵臓のあちこちで起こり時間をかけて進行していくのです。

慢性膵炎はほとんどの場合治りません。一生うまく付き合っていくしかないのです。慢性膵炎になると、すい臓がんに移行するリスクがそうでない方と比べて12倍も高くなります。

膵臓は膵液を分泌して食べ物を消化します。また、インシュリンなどのホルモンを血液中に出して血糖をコントロールします。急性膵炎を繰り返し、長期間にわたって膵臓の自己消化による膵臓の炎症がくすぶっていると膵臓の内部が少しずつ溶けていきます。そのうちに膵臓の正常な細胞が破壊されていき、すい臓が線維化して硬く小さくなります。そして変質して固まった膵液が膵管の中で膵石という石になります。つまり、すい臓がボロボロに壊れてしまうのです。CTで膵石は白く写ります。

慢性膵炎の経過

初期

腹痛がある。へそから上腹部、背中にかけて。膵臓は機能している。

移行期(5~15年)

膵石ができる。膵臓の働きが徐々に衰えていく。それにより腹痛が感じにくくなる。

後期

下痢、体重減少、脂肪便(白くて粘りや臭いがつよい便)

膵臓の機能が壊れるから痛みを感じにくくなってくるのです。後期になるとすべての働きができなくなり、糖尿になります。

慢性膵炎の患者さんは2011年の時点で約1万8千人です。治療中の患者さんは約6万7千人です。中高年に多く、男性は女性の4.6倍多いです。

慢性膵炎の原因

男性 アルコール76% 特発性13% その他11%

女性 特発性51% アルコール29% その他20%

特発性とは原因が良く分からないものを指します。ストレス、睡眠不足も関係しているといわれます。

一日の飲酒量と慢性膵炎の発症リスク

{アルコール20g(ビール中瓶一本500ミリグラム、日本酒一合180ミリグラム)}

アルコール20g 2.6倍

アルコール40g 3.2倍

アルコール80g 13倍

アルコール100g 20倍 

慢性膵炎の人はすい臓がんになるリスクが12倍です。定期健診を受ける事と断酒をすることが大切です。早期発見が鍵です。

セルフチェックリスト 6つ以上当てはまると注意が必要です。

1 お酒が好きで毎日飲む

2 揚げ物、ラーメン、油が大好き

3 魚より肉が好き

4 野菜はほぼ食べない

5 運動はほぼしない

6 生活が不規則で睡眠不足

7 ストレスがたまっている

8 コレステロールが高い

9 タバコをすっている

10 糖尿病

検査法

問診  腹痛、飲酒、喫煙習慣などを聞く。

血液検査  

腹部CT、腹部超音波、MRI これらで判らなければ超音波内視鏡検査もある。

治療法

禁酒、禁煙、食事療法が基本。

初期から移行期 

脂肪の多い食べ物は摂取しない。(膵臓を刺激しないため)脂肪摂取量の目安は1日30~35g。

後期

食事回数を増やしてエネルギーを取る。(膵臓の働きが弱まって消化吸収が衰えているので栄養を取らないといけないため)脂肪摂取量の目安は40~60g

痛みの原因

痛みの原因は膵石です。膵石が膵管の幹に詰まっている場合は治療を行います。

体外衝撃波結石破砕衝撃波療法というのがある。これは衝撃波を体外から照射して石を細かく砕いて流しだす方法です。これはかなり痛むので麻酔をしたり痛み止めを飲んでから行います。

他に、内視鏡を十二指腸まで進めて膵管の出口から耳掃除のように石をほじくりだす方法もあるそうです。