なかなか症状が改善しない。腰の側屈痛。原点に戻る事も大切。

今回は腰の側屈時痛です。

腰を横に倒した時に腰が痛むという症状です。これは、無血刺絡や押圧刺激、俺式然等尺性収縮などを用い、臀部の筋肉や足の急所に響かしたり、お腹側の筋肉などを緩める事で早期に且大幅に改善するケースもありますが、それらを行ってもなかなか症状が改善しないケースもあります。

側屈時痛だけに限らず、どこの部位の運動時痛に関しても言えますがなかなか改善しない症状の場合はいくつかの理由が考えられます。

まず一つとして、真の原因箇所を突き止められていないという事です。

筋肉、それを包む筋膜、神経、血管、経絡、はたまたアナトミートレインという概念などの様々な繋がりと言うものが人体にはあり、その繋がりのどこかの部分で円滑に動いていない部分があると痛みなどの症状が出ます。

痛むところに必ずしも原因があるわけではなくて、はた目には全く関係ない離れた箇所(でも繋がりはある)を緩める事により改善するという考え方です。

そしてそれは、患者様の生活習慣に起因している可能性が非常に高く、何気なく行っているしぐさ、クセ、トレーニング、仕事などの何らかの動きが積もり積もって結果身体のバランスが崩れて離れた弱い部分に症状が出ているという場合があるのです。

なので、なかなか症状が緩和されない時は本当の意味での、真の原因箇所に辿り着けてない可能性がが考えられるのです。この場合、何か特殊な動きをする仕事や趣味をされていないか、2週間くらい以内にどこでもいいのでどこかを痛めたりしていないかなど注意深くお話を伺わねばなりません。

次に考えられるのは外力により組織損傷を起こしている、挫傷、捻挫、打撲などの類です。筋組織や関節部分を痛めてしまった場合は組織の修復にどうしても時間を有しますので、一回の施術ですっきりすべての痛みが無くなるというのは難しいでしょう。

最後に、加齢による変形や何らかの疾患に起因しての痛みや症状も取りにくいです。施術直後は楽になったとしてもまたすぐに痛みがぶり返してしまうなんらかの強い症状や安静時痛は注意が必要です。

今回の患者様の側屈痛は、加齢による変形や器質的な疾患が背景にあるわけではない、そして明らかに大きく捻ったなどの怪我があるというわけでもありません。恐らく知らない内に介達外力が積み重なって亜急性の損傷を起こした状態なのではないかと思われます。

繋がりの急所などを緩めてもそのような場合施術部位としては、痛む原点に戻るというのも一つです。

具体的にいいうと、今回は痛む局所に鍼で響きを与えました。以前の症例集で深部の筋肉にも皮膚表面の無血刺絡で症状が改善したという症例や、皮膚表面の刺激でも鍼と同等の効果を出せると書きました。じゃあ、無血刺絡の刺激で治るのではないのかと思われる方も多いと思いますが、そうそうすべてにおいて必ず効果が出るわけではないのです。効果が出ないときもあります。…人体はとても複雑なのです。

皮膚表面の刺激で侵害受容器の興奮が確認できているともブログで書きましたが、鍼で実際に深部の侵害受容器を興奮させて響きという独特の感触を与えるというのもひとつなのです。今回は鍼を刺して響きを与え、軽くパルスを掛けました。これで一度様子を見ます。

翌日いらっしゃった時に患者様が仰っていたのは、鍼の響きと電気鍼がよかったのか今日はグッと楽になったとのことでした。

結局今回の症状は、局所へのはり治療が一番功を成したという事になります。局所への鍼は必ずしも万能ではないですが…鍼の「響」という概念、刺激、生体反応は…やはり侮れないし神秘的なものだと思わざるを得ません。

なかなか改善しない痛みの施術で大切な事は、「絶対にあきらめない事」

「あらゆる手段を考える事」「森を見てだめならもう一度木を見る事」「診る箇所も施術法も一度原点に立ち返ってみる事」だと僕は考えます。